転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その4
「ミミちゃ~~ん」
ミケラ達が大通りにさしかかろうとした時、ミミを呼ぶ声がした。
倉庫の中から歩くビヤ樽のような女性が手を振っていた。
「女将さん」
小妖精達とクロがその女性に駆け寄る。
「あんた達にはいい人を紹介して貰って本当に助かったよ」
とクロを見て誉める。
「別にぃ、あたいは困っている奴に困ってる奴を紹介しただけだし」
行く当ての無いクロをこの女将に紹介したのはミミだった。
ミミは面倒見が良く、裏通りでふらふらしている者達に仕事を見つけてきては、働かせていたのだ。
「元気な奴がふらふらとしてなにやってんだ、働け、働いて金稼いであたし達に貢げ!」
と尻を叩いて働かせていたのだが、ミミが紹介する仕事は自分たちに合うと手下達の受けは良かった。
「姐御、ちわっす」
通り過ぎる作業員の何人かがミミ達に挨拶して通り過ぎていく。
この倉庫にも作業員や用心棒を何度か斡旋していて、ミミ達は女将に気に入られていたのだ。
「あははは、あんたも相変わらずだね。助かったの本当だから、ありがとう」
女将は豪快に笑う。
それから、
「ミケラ様、こんにちは」
女将はミケラに挨拶すると、
「少し待っていて下さいね」
そう言い残して倉庫の中に戻ると、小さな袋を持って現れた。
「これ、みんなで食べて下さい」
ミケラに手渡す。
「貰っていいの?」
ミケラが袋を手にして見上げる。
「はい、ミケラ様の為に用意したんですから。どうか受け取って下さい」
「ありがとう」
元気よくミケラはお礼を言う。
「良かったですねお姫様。女将さんもありがとうございます」
クロがニコニコ笑いながら女将に頭を下げる。
「姫様、何が入ってんだい?」
「姫様、中見よう」
チャトーラとチャトーミが興味津々の目で覗き込んでくるので、ミケラは袋を開ける。
中には歩きながらでも食べられる、甘いパンが入っていた。
「女将さん、サンキュー」
「私これ大好き、女将さんありがとう」
袋の中を覗き込んだチャトーラとチャトーミが満面の笑顔で女将さんにお礼を言う。
その様子をタマーリンは少し離れた場所で見ていた。
「タマーリン、そんなところにいないでこっちへおいで」
それを見つけて女将はタマーリンを手招きをする。
しばし考えたが、ミケラの事も気になるのでタマーリンは渋々やってくると、盾にするようにミケラの後ろに立つ。
「本当に相変わらずだねあんた、そんなんじゃシャムーザ様も浮かばれないよ」
「お爺様のことは言わないで」
シャムーザはタマーリンが幼い時に亡くなった祖父で、幼いタマーリンの才能を見抜き魔法の手ほどきをしてくれたタマーリンが敬愛する数少ない存在であった。
「やれやれ」
女将は肩を竦めると、
「ミケラ様、今日はどちらにお出かけですか?」
ミケラに話題を振る。
「草原、変な人がいるんだって。剣振り回したり、走ったり・・・それと、・・・・・・あっそうだ、急に笑うんだって」
ミケラは楽しそうに説明をする。
「そうなんですか、草原に変な人が。それは楽しそうですね」
「うん」
女将とミケラは一緒に笑う。
「ミケラ様気をつけて行ってらっしゃい」
女将が手を振って一行を見送った。
「クロ、ミケラ様をしっかりお守りするんだよ」
「はい、お任せ下さい」
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