6話「お妃様の陰謀 117」
「ミサケーノの功績を称えて、何か望みは無いかと聞いた所、
「転生して普通に平和に暮らしたい」
と言われたのです」
ミサケーノらしいと思いつつ、
「それがミサケーノの魂を二つに割ったのと、どう関係がある?」
内側から湧き上がる怒りを抑え込みながらマオは尋ねた。
「ミサケーノの魂に刻まれた聖女の聖刻は力が強すぎます、たとえ封印を矛しても自力で解除してしまうでしょう。そうなれば再び聖女としての生活が待っています。力を弱める為には魂を二つに割るしかないですよとミサケーノに伝えましたら」
「それでいいと言ったんだな?」
ミサケーノなら当然そう言うと思っていた。
「はい」
「判った、予はミサケーノの盾じゃ。ミサケーノが来世で平穏を望むのなら、予はその為の盾となろう」
マオはミサケーノの魂を守るようにその場で眠りについた。
「マオちゃ~~~ん、馬車に早く行こうよ」
ミケラが部屋の外で呼んでいる。
その声にうつらうつらしていたマオの目が覚める。
「スマン、今行くのじゃ」
朝食を済ませ、帰宅の為の荷造りをしている最中に寝てしまったらしい。
荷造りと言っても、着替えの服だけなので小さな鞄に入ってしまうので直ぐに終わってしまったのだが。
「何か、大切な夢を見た気がしたのじゃが・・・まっ、良いか」
鞄を肩に掛けるとマオは外に出た。
「遅いよマオちゃん」
「わはははは、スマンナ」
外には既にマオ以外、全員揃っていた。
「お世話になりました」
タマンサが女将さんに軽く頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ本当に助かりました。タマンサさんの歌、本当に素敵でした。またいらして下さいね、お待ちしています」
「はい、また家族で来ます」
挨拶を済ませると、
「じゃ、俺たちは先に帰ってるから」
「姫様、バイバイ」
チャトーラとチャトーミは身体が鈍ると言って、走って街に帰るのだ。
二人を見送ってから、それぞれ馬車に乗る。
タマンサの両親がミケラ達の乗ってきた馬車に乗る事になったので、代わりにモモエルとキティーがお妃様の馬車に乗る事になった。
「凄いです、王様が乗っている馬車にわたしが乗る事になるなんて」
キティーは感激しまくりである。
「うふふふ、でもこれは長距離移動用だから乗り心地が今ひとつなのよ」
お妃様は感激して興奮しているキティーを優しく見つめていた。
この馬車を使ってお妃様はタマンサの両親を迎えに行っていたのだ。
「なんとか、タマンサの歌には間に合って良かった」
お妃様一人だけならこんな手間を掛ける事無く、影移動で一瞬でお城から来られるのだが、今回はタマンサと両親を引き合わせ出るのが目的だったのでそれも出来なかったのだ。
今回の企てもタマンサと両親を会わせる事が目的だった。
まともに会わせようとすれば、タマンサが逃げるのは判っていたので、逃げられないようにする必要があったのだ。
「でも、なんとか丸く収まってやった甲斐はあったわね」
タマンサは両親を自分の家に案内すると言いだし、急遽、モモエルとキティーがこちらに移ってくる事になったのだ。
「うふふふふ」
そのモモエルはさっきから嬉しそうに笑っている。
「モモエル様、ミケラ様と一緒の馬車で無くて本当に良かったんですか?」
モモエルがミケラ様大好きなのを知っているので、キティーは少し心配になって聞いた。
「いいのよ、街に戻ればミケラ様にはいつでも会えるから」
そう言って微笑むモモエル。
モモエルがさっきから嬉しそうに笑っている原因は別にあった。
楽屋で皆が部屋に帰り始めた間際、
「俺はよ、研究所に戻るぜ」
それだけ言ってクッロウエルは移動工房の方へと消えていったのだ。
「クッロウエル様が戻ってくる。うふふふふ、またクッロウエル様の職人技が目の前で見られるのだわ」
クッロウエルの職人としての腕に心酔しているモモエルは、心の底からクッロウエルが研究所に戻ってくる事が嬉しくて仕方ないのだった。
馬車は問題なく、次の日に街に到着した。
「ミケラ様が帰ってきたぞ」
「お帰りなさいミケラ様」
街にミケラの乗った馬車が着くと、街中で出迎えてくれたのだ。
「な、なんの騒ぎだい?」
その騒ぎに訳が判らず、呆然とする馬車の一同。
七話に続く
後書きです
やっと6話が終わってホッとしています。
落ち着くところに何とか落ち着かせることができて、話に続くと終わりましたが、
次回から外伝がしばらく続きます。
外伝の宣伝をば、
迫る魔獣の群れ。ごと
迎え撃つ、武茶士、虎次郎。
「うざいですわ、灰も残らないように森吹き飛ばして差し上げますわ」
ぶちぎれるタマーリン。
「やめてください、やめてください。そんな事したらエルフの国と戦争になります」
それを泣いて止めるサビエラ。
新時代のヒロイックファンタジーがいよいよ幕を開ける!
煽りすぎ(^^♪
ではまた来週(^O^)/
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