転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その3
「草原ならそれほど遠くないですから、ミケラ様がお妃様に怒られる心配もありませんわね」
タマーリンも乗り気で話に加わって来た。
ミケラは虎次郎と一緒なら街の周りを歩くのは大目に見られていたが、あまり遠出をするとお妃様に怒られるのだ。
「いきなり走って・・・ジャンプして・・・笑い出す・・・面白そう!」
小妖精達の話しに、ミケラの瞳がキラキラと輝く。
「決まりだな」
「決まりじゃん」
「四露死苦」
「決まりですわね」
皆が歓声を上げる。
「虎次郎、お散歩行こう」
「御意」
ミケラが声をかけると虎次郎が瞬時にミケラの横に立った。
「うわっ」
「びっくりじゃん」
「四露死苦!」
小妖精達は驚きびびったが、タマーリンは「ふん」とそっぽを向き、
「ミケラ様、参りましょう」
ミケラの手を取って歩き始める。
なし崩し的に小妖精も虎次郎もその後を追いかけることになった。
「ミケラ様、お出かけですか?行ってらっしゃいませ」
ロレッタが廊下から手を振って見送った。
「チャトーラさん、本当に今日、お姫様が出てくるんですか?」
「大丈夫だよクロにゃん、兄ちゃんの勘は良く当たるから」
「そうだぞ、俺様の勘にどんと任せておけ」
チャトーラがどんと胸を叩く。
「そ、そうなんですかねぇ・・・」
クロは疑わしそうな目でチャトーラ兄妹を見た。
因みにクロとは神龍にミケラが付けた名前で、
「黒いから名前はクロね」
「はいぃぃぃ!素敵な名前ありがとうございます」
名前を付けられた時には神龍は天にも舞い上がるほど喜んだ。
「チャトーラ」
離している間に、タマーリンに手を引かれお城の門から出てきたミケラが、チャトーラ達を見つけて元気いっぱいに手を振る。
「お姫様」
クロが喜びの声を上げる。
「ほら、兄ちゃんの勘は当たるんだから」
「本当ですね、疑って済みません」
「いいって事よ、それより姫様のところに早く行こうぜ」
チャトーラ達三人は、ミケラ達と合流する。
「で、今日の散歩は何ですかい?」
「草原に変な奴がいるだよ」
「剣を振り回したり、突然走り回ったり、大きな声で笑ったりする変な奴じゃん」
「四露死苦」
「何だよ、今度のネタもお前らかよ」
チャトーラは胡散臭そうに小妖精達を見上げた。
「何だよその言い方はさ」
「そうじゃん、チャトーラのくせに生意気じゃん」
「四露死苦!」
チャトーラと小妖精達は睨み合う。
「まぁまぁ、ここは僕の顔を立てて穏便に」
クロが間に入るが、
「うっせぇ、引っ込んでろ!」
「トカゲのくせに生意気だ!」
と逆に怒鳴られてびびって終わる。
「まあまあ、ミケラ様の前で喧嘩はいけませんよ。ここはわたくしの顔を立てて穏便にお願い致しますわ」
とタマーリンが声をかけ、チャトーラとミミがタマーリンの顔を見た瞬間に一気に血の気が引け真っ青な顔になった。
「に、兄ちゃん大丈夫?」
真っ青な顔でふらふら歩くチャトーラにチャトーミが心配して声をかける。
「や、やっべえもん見ちまった」
げんなりした顔でチャトーラは応えた。
「ううっ、今夜夢に出てきそう」
ふらふらと飛ぶミミにシルゥとリーが寄ってきて、
「大丈夫かじゃん」
「四露死苦」
両側からミミの身体を支えた。
そんな二人を見て、
「お~ほっほっほっほっ」
と高笑いを上げるタマーリン様であった。
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