6話「お妃様の陰謀 109」
最後に出演者全員でステージに上がった。
「出演した演者に、皆様からの温かい拍手をお願い致します」
タマンサが宿泊客にお辞儀をすると、盛大な拍手が起きた。
「お嬢ちゃん良かったよ」
「歌、心に響きました」
「三人になるなんて、本当にびっくりしたぞ」
激励や賞賛の声も飛び交う。
「ありがとうございます」
タマンサはにこやかに笑いながら宿泊客に愛想を振りまく。
「わたし達はこれで失礼致します、ごゆるりとご歓談下さいませ」
もう一度、深々と頭を下げてから、後ろのみんなに合図を出す。
一人一人頭を下げてからステージを後にして、最後にタマンサが残ると、
「ショーはこれにて終了致します、ありがとうございました」
挨拶するタマンサの前に幕は下りた。
「ミケラ、さっきのはなんだったのじゃ」
マオがミケラに声を掛けた。
「さっきのって?」
「サクラーノと二人で上を向いて目を見開いたじゃろ」
マオの言葉に、
「わたし、そんな事していないもん」
「わたしもしていないもん」
ミケラもサクラーノもしていないと言い張る。
「しかし、予は二人が・・・」
「はいはい、お喋りは後にして先に進みましょう」
モモエルが三人に先に進むよう促す。
「す、済まぬ」
ステージの横にある楽屋に向かう狭い通路で三人が足を止めたので、後の人つかえてしまったのだ。
マオは急いで歩き出し、
「マオちゃん待って」
「待って」
とミケラとサクラーノが後を追う。
「マオは勘がいいですから感づいているんでしょうね・・・それにあの子は多分。一度しっかり話し合う必要があります」
去って行くマオの背中を見ながらモモエルは決心をした。
ミケラ達が楽屋に戻ると意外な人物が待っていた。
「あっ・・・お母様・・・」
その人物に気がついてミケラは入り口で立ち止まってしまう。
「どうしたのミケラ、そんな所で止まったら他の人の邪魔じゃない・・・あ~~~くそ、じゃないお妃様」
「てい」
お妃様は速攻でタマンサに走り寄るとその頭にチョップを食らわす。
「痛い、何するんですか」
「ふん、今、くそ婆って言おうとしただろう」
「ギクッ・・・いやだわ、子供達の前でそんな汚い言葉使うわけ無いじゃないですか」
タマンサは笑って誤魔化そうとしたが、目は完全に泳いでいた。
「本当にあんたはいつまでも子供なんだから」
お妃様はやれやれと溜め息をつく。
「そっちの二人、こちらにおいでなさい」
部屋の奥にはお妃様より少し若い夫婦らしいケットシーもいた。
「お妃様、もしかしてこの子が・・・」
女性の方が恐る恐るお妃様に尋ねた。
「そうだよ」
お妃様は頷く。
「誰?」
タマンサが何気なく聞いた途端、
「このバカ娘、親の顔も忘れたのかい!二十年以上も前に家を出たっきり一度も帰ってこなかった放蕩娘が!」
女性の方が走り寄ってきて、タマンサの頭をぽかぽか殴り始める。
「えっ、もしかしてお母ちゃん?ごめんなさい、ごめんなさい」
タマンサは頭を抱えてひたすら謝る。
「お母さんをいじめちゃメッなの」
「メッなの」
ミケラとサクラーノがタマンサを守るように間に入る。
「タマコ、小さい子供の前でもうお止め」
旦那さんも止めに入った。
「そうね、お嬢ちゃん達ごめんね・・・てっ、お母さん?」
「うん、わたしの娘達よ」
自分の娘と堂々と言うタマンサ。
「こっちがミケラで、こっちがサクラーノ」
「ミケラって・・・」
タマコはお妃様の方を見る。
事情は聞いているようだ。
「ミケラ、サクラーノ。お母さんは大事なお話があるから、邪魔しないように向こうへ行っていましょう」
ロレッタが機転を利かせてミケラ達を楽屋の裏口から外へ連れ出す。
「わたし達も邪魔だから、マオ、チャトーラ、白妙達も行きましょう」
モモエル達も後に続く。
「じゃ、俺も行くぜ」
お妃様に軽く頭を下げて、クッロウエルも楽屋を出て行った。
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