6話「お妃様の陰謀 107」
「それは~」
今までは打って変わって厳かな声が広間にこだます。
「この歌は」
ミケラのショーの後でうかれていた宿泊客達が、歌が始まると次々と真剣な眼差しでステージを見る。
「ミサケーノの前に~降臨なさった~~~」
この歌はウーディント王国で最も信仰されているミサケーノの生涯と功績を称える歌だったのだ。
降臨した神からミサケーノが聖女の力を授かる場面だ。
宿泊客のほとんどがミサケーノの信者、違うのは忍だけだろう。
「目覚めしぃぃぃミサケェェェェノォォォォ」
ミサケーノがついに聖女として覚醒したのだ。
「襲い来るぅぅ魔物たちぃぃ」
そこへ魔物達が急襲してきた。
「聖女の力の前にはぁぁぁぁ無力ぅぅぅぅぅ」
ミサケーノが聖女の力で難なく撃退したのだった。
「だがしかし、だがしかし、怒れる村人達ぃぃぃぃぃい」
魔物はミサケーノだけではなく村も襲ったのだ、魔物が村を襲ったのはミサケーノが聖女になった所為だと村人達はミサケーノに迫った。
「拳を固めるミサケェェェノォォォォ、地に倒れ伏す村人ぉぉぉ達ぃぃぃぃ」
ミサケーノは拳で語り合う武闘派聖女であった。
村人全員、ミサケーノの拳と語り合い逃げる暇も無く殴り倒されたのだ。
「流石ミサケーノ様だ」
「流石、武闘派聖女様ですわ」
歌うタマンサに手を合わせ涙ぐむ者さえいた。
「聖女は立ち上がりぃぃ、村をぉぉ守るぅぅぅう」
ミサケーノはそれから、一人で魔物から村を守り抜いたのだ。
王国の各地に魔物は出没し、被害を拡大していったがミサケーノの守る村だけは被害が出ず、それを聞きつけた騎士団が視察にやってくる事になった。
「あれぞかの村なるぞぉぉ、指を指す騎士団長チャトォォォォォ、そこへ襲い来る魔物達ぃぃぃぃ」
騎士団一行を魔物達が襲った。
応戦するが、魔物の数の前に、じりじりと追い詰められていく。
流石に精鋭達、まだ犠牲は出ていないが、それも時間の問題と騎士団長チャトーが覚悟した時、
「ああ、その時~その時~響き渡る雄叫びぃぃぃぃぃ、爆速改心パァァァァァァンチィィィィィ」
爆速で走ってきたミサケーノのパンチが騎士団を追い詰める魔物達を一気に吹き飛ばしたのだった。
「よっ、ミサケーノ様」
「お強いですミサケーノ様」
一斉に湧き上がる拍手。
「またねバイバイ」
改心パンチで改心した魔物達は頭をペコペコ下げながら去り、それを手を振って見送るミサケーノ。
「あなたは~~、いえ~、あなた様は~~~~~」
ミサケーノの前に傅く騎士団長チャトー。
実際にはその前に一悶着合ったのだが、歌の中では端折られている。
「騎士団と共にぃぃぃぃ旅立つぅぅミサケェェェェェノォォ」
改心した魔物達に村の守りを任せ、ミサケーノは騎士団と共に王都に旅立ったのだった。
(Copyright2023-© 入沙界南兎)