6話「お妃様の陰謀 99」
「さて、次に参りたいと思いますが、仕度までしばしお待ち下さい」
ステージでは風船が無くなった台をクッロウエルとモモエルが片付けると、後方待機だったはずのキティーまで一緒になって別の台と黒板をステージに運び込む。
普段から力仕事をしないキティーやモモエルが、ステージの上で汗を流しながら台を押している姿を見て、ステージの様子を記録しているロレッタは唇を噛む。
本当は二人とも後方待機だったのに。
それが煙を吸い出す為にチャトーラとトランスロットを取られ、司会進行が出来るのがタマンサしかいないという事になってロレッタは記録係専任になってしまったのだ。
最初は「自分も撮るから」と言っていたタマンサだったが、
「じゃ、お願いね」
とロレッタに丸投げしていったのだ。
「初めからわたしに押しつけるつもりだったんじゃ」
と疑う。
確証があるわけではない。
娘としての勘程度の物だ。
「母さん、お人好しのくせにずるい所有るから」
と溜め息をつく。
やっかい事を背負い込んできては家族に丸投げするのが、昔からのタマンサの悪いクセだったのだ。
「今更言っても仕方ないし」
ステージの方へ意識を戻す。
出来れば、今すぐステージに行ってモモエル達を手伝いたい衝動をぐっと我慢する。
「引き受けたからには、きちんとやらないと」
引き受けた事を途中で投げ出したり出来ない性格なのだ。
その性格を知っていてタマンサの掌の上で踊らされている気もしなくは無いが、
「やると言ったからには、やってやるわよ」
記録器を掴む手に力が入る。
新しくステージに置かれた台には縦五列、横五列に紙風船が取り付けられ、紙風船に一から二十五の番号が書かれている。
「皆さんの前に置かれた台の紙風船に、一から二十五の番号が書かれているのはおわかりでしょうか?」
タマンサはことさら大きな声、大きなジェスチャーで動いた。
短めのスカートがフワッと広がり、網タイツのすらっとした足が露わになる。
「ちょっと、タマンサさん」
それに驚き顔を赤らめるモモエルとキティー。
二人の声が聞こえたのか、タマンサが二人の方を見てニコッと笑う。
その笑顔に二人はドキッとした。
「なんて素敵な笑顔・・・」
「輝いて見える・・・」
二人はうっとりとした顔でタマンサを見つめた。
モモエルとキティーの目には、タマンサが地上に舞い降りた女神様に見えていたのだ。
「あぶない、あぶない。つい歌姫の能力使っちゃったけど、大丈夫よね?弱い方だし」
タマンサはちらっとモモエル達の方を伺ったが、既に魅了からは解放されているようで次に使う台の横で待機すべく移動しているのが目に入ってほっとする。
二人はまだこれからステージの設営をして貰わなければならない、迂闊に魅了して後の作業に支障が出ては大変な事になる。
「ステージがうまくいっていたからちょっと油断したわ、まだ先があるんだから気をつけないと」
素早く切り替えて宿泊客に満面の笑顔をふりまく。
後書きです
来てしまいましたね、99話目。
まさか本当に行くとは(笑)
これでもあれこれはしょったんですけどね。
ミケラのエピソーと2つとサクラーノの話一つ削りました。
蛇足的話なので無理に入れる必要もないし。
ここまでくればあと少しです。
外伝の方も少しずつ書いてるので
ではまた来週(^_^)/~
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