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6話「お妃様の陰謀 95」

「ナイフ投げなんて珍しくないぞ」

「そうだ、そうだ」

 お酒の入ったお客からヤジが飛ぶ。

 しかし、そんなヤジなどにタマンサは動じず、チャトーミの所に行くと、

「度肝を抜かして上げなさい」

 と耳元で囁く。

 黒妙のナイフ投げの邪魔にならない位置まで移動してから二人に目配せで合図し、

「さあ、見事ナイフは頭の的に当たるでしょうか」

 と再びよく通る声で叫ぶ。

 その声を合図にチャトーミの身体が三人に増えた。

 続いて黒妙の身体が二人に増えた。

「うぉぉぉ、すげぇ」

「こっちは三人で、あっちは二人に増えたぞぉ」

「どうなってんだ?」

 お客達の視線がステージに釘付けになる中、黒妙は次々とナイフを投げる。

 ナイフを投げ終わり二人が元に戻ると、見事ナイフは三本ともチャトーミの頭の上の的の真ん中に刺さっていた。

「凄いぞ姉ちゃん達」

「良いものを見せて貰った」

「旅行に来た甲斐があったぞ」

 拍手喝采が飛ぶ。

「ありがとうございます、ありがとうございます」

 タマンサがステージの上でお客達に手を振る。

「もう一度、二人に拍手をお願いします」

 タマンサはチャトーミと黒妙の手を取って高く掲げた。

 再び起こる拍手と喝采。

「あと少しだから頑張って」

 二人の手を取りながらタマンサは囁く。

 今の技は二人の体力を大幅に削る。

 実は二人とも立っているがやっとなのだ。

「幕を下ろせ」

 クッロウエルのダミ声が響き、トランスロットが幕を下ろす。 

 幕が下りると同時にチャトーミと黒妙が崩れるようにその場にへたり込む。

「チャトーミ、大丈夫か」

「黒妙!」

 チャトーラと白妙が駆け寄り、二人が肩を貸してステージの袖の奥へとチャトーミと黒妙を連れていった。

 その横をモモエルとクッロウエルが次の出し物に使う台をステージに押していく。

 タマンサはそれまでの時間稼ぎの為に下りた幕をくぐり抜けて宿泊客の前に姿を現す。

「みんな、どこから来たんですか?」

「ウーディント王国からだよ」

「ウーディント王国からですか、ずいぶん遠くからいらしたんですね」

 ウーディント王国は人間の国だ、一番近い国境はこの宿から馬車で二日はかかる。

「王都は遠いけど、俺たちはウードワスだからめちゃ遠くでもないけどさ」

「ウードワスですか、あそこは良い街ですよね」

 ウードワスはケットシー王国との国境に一番近い街で馬車で二日の距離だ。

 地理的条件を生かしてケットシー王国との貿易都市にもなっていた。

 ケットシーも多く暮らしている。

 目の前にいる泊まり客はほとんど人間だったが、一人だけケットシーの女性が混じっているのもその為だろう。


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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