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6話「お妃様の陰謀 94」

 わたしは戦闘服に袖を通した。

 戦闘服これを着るのはかなり久しぶりだ。

 体型は変わっていないはず、よしっ着られる。

 戦闘服を整えると、鏡を見てペイントを施す。

 これから戦場に向かうのに素顔のままでは無謀だ。

 このペイントをするのもかなり久しぶりのはずなのに、身体が覚えている。

 準備は整った。

 わたしは所定の位置に付く。

 ここから一歩先は戦場だ。

 さあ戦争を始めましょう。

 わたしは踏み出した。



「みんな、いらっしゃい」

 タマンサがステージの袖から躍り出た。

 その姿を見て、ロレッタ以下、参加者達のほとんどが凍り付く。

 タマンサは全身網タイツの上から膝上10センチの真っ赤なミニスカート、上は真っ白な大きめの襟のノースリーブの身体の線がはっきりと判る真っ赤なシャツに黒い蝶ネクタイ。

 頭にはピンクの大きめのリボンがあり、唇には薄いピンクのルージュ。

 刺激的な衣装に食事をしていた泊まり客も、一瞬手を止めてタマンサを見た。

「母さん、やめてよ恥ずかしい」

 ロレッタは録画機でステージの様子を撮りながら心の中で叫ぶ。

 ロレッタのそんな心の叫びが聞こえるはずもなく、タマンサは司会を続ける。

「これから皆さんのお食事をしている間、出し物をやりますね。面白かった出し物には拍手をお願いしま~~す」

 軽くウィンクするタマンサ。

 その瞬間、タマンサのタレントの歌姫が発動し、ウィンクを見た全ての人のハートを打ち抜く。

 それはロレッタも例外では無かった。

「か、母さん素敵・・・はっ、わたし今何言った?」

 直ぐに正気に戻ったが、宿泊客はそうはいかない。

 ただでさえタマンサは実年齢よりかなり若く見えるのに、派手なステージ衣装で見た目の年齢が更に下がり、たった今発動した歌姫の力により、宿泊客にはタマンサは十代の少女のように見えていたのだった。

 恐るべし、歌姫の力。

 熱狂する宿泊客に手を振りながら、

「ありがと、それじゃ最初の出し物行きますよ」

 最初は黒妙とチャトーミだ。

 チャトーミはいつもの動きやすい服に、頭の上に的を付けている。

 黒妙は腰に派手な色の布を巻いているが、それ以外はチャトーミと同じような動きやすい服装。

 宿泊客の熱狂が一気に冷める。

 しかし、タマンサはそんな事は一切気にしていなかった。

 冷めた観客の様子を見て逆ににやっとする。

 タマンサは黒妙の手に握られている三本のナイフを指さしながら、

「さあ皆さん、ご覧の通りこれからこのナイフをこちらの子の頭の上の的に投げます。見事三本とも的に命中したら拍手喝采をお願いしま~~す」

 タマンサがよく通る声で説明した。


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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