6話「お妃様の陰謀 92」
「ダメですよ、決めたらきちんと実行しないと。後回しにするとずるずると後回しにしてしまって結局やらないという落ちになりますよ」
モモエルにそう言われて、
「うぅぅ・・・・・・」
と唸って下を向いてしまうマオ。
なんとかして上げたいが、肝心のマオがこの調子ではなんともしようもなくモモエルは溜め息をつく。
ふと顔を上げると、タマンサとロレッタがしきりに合図を送って寄越しているのに気がつく。
最初は何のことか判らず戸惑ったが、
「もしかして夕べの会話が聞こえていた?」
と思い当たる。
「それで納得がいきました」
朝からタマンサとロレッタがやたらニコニコしていたのも、今日のこの事を知っていたからだ。
「判りました、お姉さんが一肌脱ぎますよ」
モモエルは決心すると立ち上がった。
「マオ、行きますよ」
マオの手を引っ張って立ち上がらせる。
「ちょ、何をするのじゃ」
そのままマオの手を引いてタマンサ達の前まで歩く。
「ほらマオ、お話があるんでしょ?」
「で、でも」
まだ躊躇するマオ。
「大丈夫、わたしがちゃんと手を握っていて上げますから」
モモエルはマオに優しく笑いかける。
「う、うん」
マオはモモエルの顔を見上げた。
それからタマンサとロレッタの顔を見る。
マオの手に力が込められるのをモモエルは感じた。
「タマンサ、昨日の話じゃが・・・そ、その、予を家族にしても大丈夫か?予は魔王じゃぞ、人間でもケットシーでもないのだぞ」
「全然問題ないわ。ねっ、ロレッタ」
「マオはマオじゃない」
「良いのか?本当に良いのか?」
「わたし達はマオの事が大好きだから家族になりたいの、それだけよ」
「そうだよ、それだけの話よ」
タマンサもロレッタも最高の笑顔をしていた。
「・・・予をタマンサ達の家族にして欲しいのじゃ、よろしく頼むのじゃ」
モモエルがそっと身体を寄せてきた。
「よし決まり、これから一杯美味しいモノ作って上げるからね」
「服も一杯作って上げるわ」
マオもようやく悟った、夕べの廊下でのモモエルとのやりとりをタマンサとロレッタが聞いていた事を。
「お、お主達、夕べの予とモモエルの話を聞いておったな」
「別に聞いていたわけじゃないわよ」
「そうそう、夜の旅館は静かだったから自然に聞こえてきただけだから」
マオの顔が耳まで赤くなり、
「うひゃぁぁぁぁ」
変な悲鳴を上げてモモエルの後ろに隠れたのだった。
「うぅぅぅぅ、恥ずかしいのじゃ」
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