6話「お妃様の陰謀 87」
「どうマオ?」
「なかなか良いではないか、黒はやはり予に似合うのじゃ」
タマンサの作っていたマオの衣装が完成して、試着した所だった。
衣装はレオタードに似ていたがレオタードと違い、お腹の部分が大きく切り取られお腹は丸見え状態、背中も翼が出し易いように腰のあたりまでぱっくりと開いていた。
見た目は八歳なので色気など皆無だったが、マオのすらっとした手足が強調され魅力を最大限引き出している。
「翼を出してみて」
「おうよ」
マオは翼を広げる。
「どう?」
「いい感じじゃ、服を着ていても翼は出せるが、この服の方が開放感があっていつも以上の力が出せそうじゃ」
マオは気が入ったようでタマンサもほっとする。
「どこかきつい所はない、あったら直ぐに直すわよ」
「問題ない、この服をこのまま着ていたいくらいじゃ」
「流石にそれはね」
いくらマオが子供に見えるとは言え、露出部分が多すぎる。
この世界の下着でも、もっと露出が少ないのだ。
タマンサの常識が欠落しているとは言え、いくら子供でも下着以下の服で街中を歩かせてはダメくらいの常識は持ち合わせていた。
「ダメか?」
マオはタマンサを見上げた。
「うん、子供をそんな格好で歩かせたらわたしが怒られちゃうから」
「そうか、予も世話になっている身じゃからのう。迷惑になるなら諦めるしかないのじゃ」
マオは素直に諦める。
しかし、タマンサは逆にそれが心配になった。
「もっと我が儘を言ってもいいのよ、子供なんだから」
「でも、今ダメと言ったではないか。予はお主達に世話になっているのじゃから・・・それに予は魔王じゃから・・・」
と言いながらマオは下を向く。
「それに予はお主達とは違うのじゃ」
下を向きながら小さな声で呟く。
元々マオは勇者である武茶士を倒す為だけにこの予に生を受けたのだ。
それも勇者をこちらの世界に転生させた猫神に嫌がらせをする為だけに。
それがいつもマオの心の中に引っかかっていた。
「それならうちの子になっちゃう?」
意外な提案に驚いて顔を上げるマオ。
「よ、良いのか?予は魔王じゃぞ、勇者を倒すだけに生まれた存在じゃぞ」
マオは目を見開いてタマンサを見上げた。
「関係ないわ、わたしがマオのこと好きだから、それじゃダメ?」
「ダメではないが・・・」
なんと言っていいか判らず、目を逸らすマオ。
「それに、サクラーノだって懐いているし。ミケラとロレッタはお城だし、トランスロットはあの性格だから・・・ずっと居てくれると嬉しいわ」
「予も昼間は仕事があるのじゃ・・・それでも、それでも良いか?」
「いいのよ、マオが安心して帰れる場所であれば」
タマンサは優しく微笑む。
マオは武茶士が砦に行っている期間、預かっているだけなのだが、家に帰ってきてサクラーノと遊んでいる姿は見かけ通りの年相応にしか見えない。
ただ、時折見せる大人びた物わかりの良さに違和感を感じていた。
ミケラやチャトーラ達の話では、元々は闇を纏った巨人だったが、不慮の事故で今の姿になったと言うが、ならば年相応の生活をして貰いたいと思っていたのだ。
「でもな・・・」
マオはまだ迷っているようだった。
「いいわ、そんなに慌てて決めることでもないし。ゆっくり考えてね」
「判ったのじゃ」
マオはそう返事をするとミケラ達に衣装を見せにステージに飛んで行った。
「母さん」
ロレッタが声をかけてきた。
「あらいたの、もしかして今の話聞いていた?」
「うん」
ロレッタは素直に返事をした。
「あなたはどう思う?」
「マオはいい子だと思う、わたしも好きよ・・・でも時々変に気を遣いすぎてるなと思う時もあるかな」
「だからうちで引き取って、もっとのびのびとして欲しいと思うのよね」
「そうだよね、あの子の笑った顔は凄く可愛いものね。いつも笑顔でいられるようにして上げたいわね」
ロレッタも本当にマオのことが好きだったのだ。
後書きです
マオに新展開。
登場時はここまで考えていなかったんですが、書いていて面白い子なのでつい優遇しちゃいます。
マオのお悩み解消も今後書かないとだめなんでしょうが、今のところ予定なし。
次の外伝のネタを考えるので一杯一杯です。
ではまた来週(^_^)/~
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