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6話「お妃様の陰謀 85」

「それをここに持ってきたと言うことは」

 タマンサは理由は判っていたが、敢えて聞く。

「はい、お妃様にステージに出演中のミケラ様を撮ってこいと言われました」

 やっぱりねとタマンサは頷く。

「それでそれ、どれくらいの時間記録出来るの?」

「一時間くらいです、充填した魔力を使い切ってしまうので」

 一般家庭二ヶ月分の魔力を充填出来て、それを一時間で消費してしまうなんてなんて大食らいなのかしらとタマンサは思う。

「でも、記録媒体はもう一つ持ってきたので、合わせて二時間は記録出来ますよ」

 二時間と聞いてタマンサがニコッと笑う。

「それだけあれば充分ね、私の方も後はマオの服を作るだけだからそうしたら、わたしが撮って上げるわ」

 タマンサの提案にモモエルは咄嗟に記録箱カメラを隠そうとする。

「大丈夫よ、もう頂戴なんて言わないから。新しく作ってくれるんでしょ?」

「はい、それは間違いなくお約束します」

「昔からモモエルは約束は必ず守るからね、そのおかげでずいぶん助けて貰ったし」

 夫を亡くし、生まれたばかりのサクラーノを抱え、更にミケラを押しつけられててんてこ舞いだった所へ、モモエルが倉庫の女将さんを連れて現れたのだ。

 それから、忙しい合間を縫って献身的に助けてくれるモモエルにどれほど救われたか判らない。

「それにモモエルに任せておいたら、ミケラばかり撮ってしまうでしょ?」

 モモエルはギクッとしたが、否定をすることも出来ずに目を逸らした。

「うふふふ、大丈夫。わたしはお妃様とは付き合いは長いから、どんな光景を喜ぶかも知っているから任せておいて」

 悪戯っぽくウィンクするタマンサ。

 そのウィンクにドキッとするモモエル。

 生き生きとしている時のタマンサは輝いて見えてまぶしく感じるのだ。

「ロレッタ、悪いけどこっちへ来てくれる」

「何よ母さん、わたし忙しいんだけど」

 ステージの作業に戻ったばかりのロレッタが、ブツブツと文句を言いながらやってくる。

「悪いわね、モモエルにその機械の使い方教えて貰って使えるようになっておいて」

 唐突の話に、

「なんでわたしがそんなことしなきゃならないのよ」

 と怒る。

「モモエルの為よ、お妃様に撮ってくるように言われたらしいけど、モモエルに任せておいたらミケラしか撮らないに決まっているわ」

 言い切られて、

「えへへへ」

 と笑うモモエル。

「そ、そうね」

 ロレッタも流石にモモエルとの付き合いは長い、優しく頭の良いモモエルがミケラが絡むとお馬鹿になるのもよく知っている。

「そ、そはそうね」

 モモエルの方を見ないようにしながら、頷くしか出来なかった。


                       (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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