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6話「お妃様の陰謀 77」

 更にクッションの何カ所かに穴が開けられ、穴からスプリングの頭が飛び出しているのが見える。

 このスプリングは台車の上にラックが乗せられても、クッションが完全に押しつぶされるのを防ぎクッションの弾力を失わせない為に入れられていた。

 振動をクッションに吸収させ、スプリングはそのクッションの性能を保つのが仕事なのだった。

「よいせっと」

 クッロウエルが軽々とラック部分を持ち上げると、台車に組み付ける。

「どんなもんだ?」

 乗せたラックの上から力を込めて感触を確かめる。

 その横でモモエルはかがみ込んで、物体鑑定を使ってクッションへの力の掛かり具合を見る。

「いい感じじゃねえか、力が入るとスプリングが押し返そうとして踏みとどまってクッションを守ってやがるぜ。これならいけそうだな」

「はい、力もいい感じに分散しているのでクッションが潰れる事もなさそうです」

 二人は満足出来る結果が出たので、顔を見合わせて笑う。

 モモエルの物体鑑定は材料の素材の分析だけでは無く、サイズの精密計測から力の掛かり具合の計測まで出来てしまうのだった。

「じゃ、本番行くぞ」

「はい」

 二人は工房を出て板場へと向かった。




「おう、出来たかい?」

 板長が二人を出迎えた。

「ここまで押してきた感じでは問題は無かったな、実際に現物を乗せてみない事には結論は出せんが」

 クッロウエルは慎重に返答した。

 絨毯の上を押した感触は概ね良好、モモエルが作ったクッションが絨毯からの振動をうまく吸収してくれていた。

 車輪もベアリングに変えた事で動きがかなり良くなっている。

 と言ってもそれはワゴンが空での話だ。

 実際にモノを乗せてみなければ本当の挙動を確認する事は出来ない。

「判ってるよ、こっちでそのワゴンとか言う奴に乗せるもんは準備する。ちょっと待ってな」

 板長は後ろを振り向くと、

「おめえら、さっさと準備しな」

「へいっ」

 板長の後ろに控えていた板前達が返事をすると一斉に動き出した。

 瞬く間に、ワゴンに料理に見立てた皿が乗せられていく。

「これでうまくいったら、本番の料理を乗せて運んで貰うぜ」

「判っている」

 仮の料理を乗せたワゴンを、クッロウエルとモモエルが交代で押して広間と板場の間を何度か往復してみる。

 取っ手は台車の方に直接付けられているので、絨毯からの振動がはっきりと手に伝わってきていたが、ラックに乗せられた水を入れた小鉢の水面はそれほどひどく揺れていない。

 クッロウエルとモモエルは押す速さや片側に力をかけるように押してみる。

 流石に力一杯押したり無理に捻ったりすると水がこぼれ落ちたが、歩く程度の速さで押す分には水がこぼれる心配はほとんど無かった。

「予想以上にいい感じじゃないか」

「そうですね、流石にお銚子のように背の高いモノは厳しいですが、小鉢程度なら問題なさそうです」

 何度か試した結果、問題なく使えるで二人の意見は一致した。

「じゃ、板場に戻って板長に報告だ」

「はい」

 二人は板場に戻り、何度か往復した結果を板長に伝えた。

「そうか、じゃ今夜の料理はそいつで運んでみるとするか。仲居達にもそいつに慣れて貰わないとなんねえからな」

 確かに、この手の道具に触れる機会の少ない仲居達に、いきなり使えというのも酷な話だろう。

「その手ほどきは俺とモモエルがやろう」

「はい、お任せ下さい」

「じゃ、そっちは頼むぜ」


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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