6話「お妃様の陰謀 74」
虎次郎は他人から見た場合、手加減の無いように見えるが、ミケラの兄という事もあるので手加減はしていたのだが、それでも子供相手に大人げないと見られてしまうのが虎次郎であった。
「そうか、お前なりに頑張っていんだな」
「うん」
自信なさげに頷く。
「チャトーラはどうしていつも元気一杯なの?」
「そりゃあ、チャトーミがあんなんだからな。兄貴の俺がしっかりしないと兄妹共々倒れちまうからよ」
妹のチャトーミがのほほんとしている分、兄のチャトーラが幼い時からその分の苦労を背負い込んできたのだ。
「俺の夢は取り敢えず、チャトーミを嫁に出す事だからよ。チャトーミに好きな奴が出来て、そいつがチャトーミを任せてもいい奴だったら嫁に出してやりたいのよ。小さい頃から苦労背負い込んできた分、幸せになったチャトーミを見るのが俺の幸せなんだよな」
はにかみながら「誰にも言うなよ」と笑うチャトーラ。
意外な話を聞いてチャトーラの顔をじっと見るトランスロット。
「姉ちゃんなんてどう?」
「へっ?」
トランスロットの言葉の意味が判らず、戸惑うチャトーラ。
「姉ちゃん、弟のボクから見ても美人だと思うし」
ロレッタは飾りっ気はまるで無いが、タマンサの娘だけ有って顔立ちは整っているし、笑うとかなり可愛い。
小さい頃からの付き合いで、ロレッタの笑顔を見るのは好きだった。
だが、それだけだ。
「トランスロット、お前さっきから何言ってんだよ」
トランスロットを見る。
「だから姉ちゃんと付き合ったら?ボク、チャトーラがお兄ちゃんになってくれると嬉しい」
笑うトランスロット。
「ば、バカ言うんじゃねえ、俺とロレッタはそんなんじゃねえからな、ガキの頃からの付き合いで・・・あれだ、腐れ縁て言う奴だ」
と言いつつチャトーラはロレッタの顔をつい見てしまう。
その時偶然にロレッタも顔を上げ、目と目が合う。
「何見てんのよ」
「サボってないか見ただけだ、バーカ」
「そっちこそサボってんじゃ無いわよ、しっかりやんなさいよね」
「わーってるよ、そっちこそしっかりやれよ」
「あんたに言われたくない」
そのまま、ロレッタは作業の戻った。
「なっ、判っただろ」
肩を竦めるとチャトーラも作業に戻る。
トランスロットは姉とチャトーラの顔を見比べる。
「本当にそうかな?」
トランスロットの目からは凄く仲が良いように見えたのだが。
それは口にせず、トランスロットも作業に戻った。
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