2話「城下の黒い影 その12」
「バインド」
横合いからバインド放たれ虎次郎は身動き出来なくなり倒れる。
「助かったぜタマーリン」
チャトーラは額の汗を拭う。
「なんなんですかこの方は、あんな物騒な殺気をミケラ様の前で放つなんて。本当に常識の無い方ですわね」
タマーリンが扇子で扇ぎながら、しゃなりしゃなり歩いてくる。
「このバカがいきなり姫様に求婚しやがったっんだよ」
タマーリアの頬が僅かに引き攣った。
「パラライズ」
いきなりパラライズを男に放つ。
「うひゃひゃひゃひゃ」
黒づくめの男が手足を引きつらせて悶絶する。
パラライズも拘束魔法なのだが、相手を麻痺させる魔法だ。
ただし高魔力で使用された場合、余った魔力が身体を駆け巡り高圧電流を流されたような激痛が走るのだ。
それを知っていてタマーリンは高魔力でパラライズを放ったのは言うまでもない。
「ほほほほほ、ミケラ様に求婚?この場で命を奪われないだけ感謝なさい。ほ~ほっほっほっほっ」
高笑いするタマーリンの目の前で痺れて悶絶していた男が、突然何事も無かったように起き上がった。
「何なんですかあなたは!」
タマーリンが絶叫に近い驚きの声を上げる。
「姫様がドラゴンさんとか言ってたな」
「はい、そのドラゴンです」
黒づくめの男が自分を指差す。
「ドラゴン?たかがドランゴン如きがわたくしの魔法を、こうもあっさりと破れるわけありませんわ」
タマーリンが更に目を釣り上げる。
「い、一応神龍をやらして貰ってます」
申し訳なさそうに黒づくめの男が頭をポリポリ搔く。
「しんりゅぅぅ~っ!ゴッズドラゴンですのあなた!」
タマーリンが目を丸くして驚く。
「えっ、そんなに驚く事なの?」
タマーリンの驚きように訳がわからずキョトンとするチャトーラ。
「あなたバカですの?ああバカでしたわね」
ふっと鼻先で笑う。
「ゴッズドラゴン、その名の通りドラゴンの神。神なんだから出会えることそのものが奇跡なのですよ。文献に確認が記されたのは千年以上前、もう伝説の世界の話ですのよ。それが目の前にいますのよ、それがどれだけ貴重な事かお判りになります?」
「伝説とか、それほどでも」
黒づくめの男が照れる。
「パラライズ」
「うひゃひゃひゃひゃ」
黒づくめの男が再び悶絶する。
「魔力を倍にしましたからゴッズドラゴンでもしばらく動けませんわよ」
高笑いをするタマーリン。
「わたくしのミケラ様に結婚を申し込むなんて、天が許してもわたくしが許しませんわ」
悶絶して苦しむ黒づくめの男を仁王立ちで指差す。
「あいつやばくね?」
「やばいじゃん、やばいじゃん」
「四露死苦」
屋根の上で下の様子を見ていた妖精達がタマーリンを見ながら話す。
「ひ~め~さ~ま~は~き~さ~ま~の~も~の~で~は~な~い」
バインドで拘束されていた虎次郎がふらふらと立ち上がった。
「あらら、ドラゴンですら1時間は拘束出来るわたくしのバインドから数分で立ち上がるなんて、あなたもとんだ化け物ですわね」
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2023/09/30 一部修正
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