6話「お妃様の陰謀 70」
「そんなのを街中に置いておいて、ミケラ様や王都は大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。王都で暮らす為に人間形態になっているんですが、その形態を維持する為に力のほとんどを使っているそうですから、神龍の姿に戻らない限りはさほど危険は無いです。それに、ミケラ様に不埒な事をしたらわたしが許しませんから。クッロウエル様、知ってます?物って究極まで冷やすと、叩くだけで簡単に壊れるんですよエヘエヘエヘエヘ」
危ない笑みを浮かべ笑うモモエルに、ドン引きするクッロウエル。
「それに、ミケラ様の周りには強い方達がいますから。タマーリンや、チャトーラ兄妹、虎次郎に・・・そうそう、あの小妖精さん達もクロさんの天敵だそうですから、ミケラ様に不埒な真似をする前に死んでますね」
これ以上は無いと言う程の爽やかな笑顔で笑うモモエル。
「こいつ、こんなに危ない奴だったのか」
クッロウエルはその笑顔にもドン引きするのであった。
「それにしてもミケラ様の周りにはいろいろな奴らが集まっているんだな?あの、マオという子供も普通の子供ではないんだろ」
「はい、本人曰く魔王との事ですが。聞いた話では初めて王都に姿を現した時には、闇の巨人の姿だったそうです」
「闇の巨人・・・それがどうしてあんなになったんだ?」
今のマオは八歳の人間の女の子にしか見えない、それが闇の巨人と言われても信じられるわけがない。
「クロさん曰く、ミケラ様にもしものことが有っていけないのでミケラ様の周りに結界を張ってあったそうなんです。その結界がマオと衝突して、マオの闇を吹き飛ばしてして今のマオになったんだそうですよ」
「なんなんだよそれは」
話しに付いていけず、クッロウエルは頭が痛くなってきた。
「大丈夫ですか、クッロウエル様?」
「神龍に魔王、おまけに勇者を拾ってきたとかミケラ様って一体何なんだ?」
疑問に思うのも当然だろう、神龍なんて会いたくても普通会う事なんてできない伝説の存在なのだから。
それが相手の方からやって来たというのだ。
それだけではなく、勇者や魔王まで周りにいると聞けば、頭を抱えたくなるのは当然だろう。
「ミケラ様はミケラ様ですよ、とっても可愛い普通の女の子です」
モモエルはニコッと笑う。
本当はミケラにも聖女疑惑があるのだが、それを言ったら更に話がややこしくなる。
それにミケラの聖女疑惑は公にすると騒ぎとなるので、尊敬するクッロウエルにも言う事は出来ないのだ。
ミケラをそんな騒ぎに巻き込みたくない、それがモモエルとタマーリンの一致した意思だった。
「モモエル、他に何か隠してないか?」
「いえいえ全然、わたしがクッロウエル様に隠し事なんてするわけないじゃないですか」
首をぶんぶん振って自分は隠し事はしてませんよアピールをするモモエル。
それが逆にクッロウエルの疑惑を招いたが、
「まっ、いい。それより今はこいつを仕上げないとな」
今抱えている、最優先で片付けるべき問題の方へと意識を戻した。
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