6話「お妃様の陰謀 65」
「チャトーミをいじめちゃ、めっなの」
ミケラはチャトーミを庇うように両手を広げた。
「ミケラ様・・・」
ミケラが目の前に現れた事で一気に冷静さを取り戻す白妙。
「申し訳ありません、つい感情的になってしまって」
そのままガクッとうなだれる。
「判ったらいい子なの、いい子いい子」
ミケラがうなだれる白妙の頭をいい子いい子する。
「み、ミケラさまぁぁぁ」
ミケラに頭を撫でられ、感激のあまりミケラにしがみつく白妙。
「苦しいよ」
「はい、一生ミケラ様に付いて行きます」
聞いてはいなかった。
ミケラに抱きついたまま白妙はおいおいと泣き始めてしまう。
「どう、落ち着いた?」
「はい、お見苦しい所をお見せしました」
白妙は広間の端の壁に背をもたれて座っていた。
「これでも飲んで」
ロレッタは冷めたお茶の入った湯飲みを白妙に手渡す。
「ありがとうございます」
白妙はお茶を一気に飲み干すと、
「ふ~っ」
と一息つく。
「白妙もずいぶんため込んでたのね、うちもさ母さんがあんな調子だから苦労が絶えなくて・・・」
苦笑いをするロレッタ。
「うちも黒妙は空気は読まないし、口は軽いし今までどれだけひどい目に遭ってきた事か・・・」
二人は同時に大きく溜め息をつく。
「まっ、愚痴くらいは聞くわよ。ため込みすぎて、今日みたいに暴れる前に家に来なさいよ、歓迎するわ」
「はい、でも代わりにわたしもロレッタの愚痴を聞きますよ。タマンサさんの他にも、ミケラ様やサクラーノも問題抱えているでしょ」
と言われて、
「ありがと、助かるわ」
タマンサの事はもう諦めが付いているが、サクラーノの事はまだまだ手が焼けそうだ。
最近は落ち着きが少し出てきたので多少ましになったが、根が元気に動き回る性格なので油断は出来ない。
そして、一番の問題はミケラ。
ほぼ生まれた時から5年間面倒を見てきた可愛い妹、でもこの国の王女様。
その時が来るのは頭の中では判っていたつもりだったが、この一年間、気持ちの整理が追いついていなかったのを思い知らされた。
でも自分より年下のミケラはもっと大変なんだと思うとそ、れを他人に相談なんて出来ない。
大人達の都合によって振り回されるミケラの方が遙かに大変で戸惑っているのは、見ていて判る。
それをどうしたらいかも判らない大事な妹を、ロレッタは側にいて精一杯支えて上げたい、今はそれだけなのだ。
「本当に頼りにしちゃうけど、いい?」
「はい、任せて下さい」
ニコッと笑う白妙。
「その代わり・・・」
「はいはい、愚痴なら幾らでも聞いて上げるわよ」
二人は顔を見合わせてクスクス笑った。
「それはそうと、白妙は虎次郎様の事が好きなんでしょ?」
耳元で囁くロレッタ。
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