表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/592

6話「お妃様の陰謀 64」

「おい、モモエルが困ってるだろ。やめてやれよ」

 チャトーラがモモエルの助けに入ったが、白妙の肩に手をかけようとした瞬間、チャトーラの身体が宙を飛んだ。

「うげっ」

 そのまま床に叩き付けられるチャトーラ。

「兄ちゃんに何すんのよ」

 チャトーミが怒って白妙の手を取った。

「むっ」

 咄嗟にその手を捻って投げ飛ばそうとしたが、捻ろうとした瞬間にチャトーミの手は無かった。

「えっ」

 と思っている内に再びチャトーミに手を握られた。

「な、なんで・・・」

 白妙は戦闘術、特に体術は忍びの学校では一・二を争う実力がある。

 同じ組で白妙に敵う男子はいなかった。

 それなりに自信はあったのに、いつもミケラを膝に乗せてニコニコ笑っているだけのチャトーミにあっさりと外されるのはかなりショックを受けた。

 確かにさっき見せた貰った分身は凄かったが、それはそれ、体術とは別物だ。

 焦る白妙。

 一方のチャトーミは争いごとは苦手なので、兄のチャトーラに任せてきり、つまり体術のたの字すら知らない。

 ただ町から町、村から村へと手紙を届ける仕事をしているので、夜通し走ることもあれば、どこかで野宿することもある。

 それ故の身を守る為の危険感知能力が自然と高くなっていたのだ。

 危険を早く関知すれば、自慢の逃げ足で危険から逃げることが出来るから。

 それに合わさって虎次郎の瞬歩を手玉に取る反射神経が、白妙の攻撃を肌で感じた瞬間に反射的に動いているだけだったのだが、それは白妙の知る事ではなかった。

「なんなのあなた」

 白妙がチャトーミの身体を掴もうとしても、チャトーミはひょいひょいとその手をかわしていく。

 掴もうとした瞬間、そこにあったはずのチャトーミの身体が霞のように消えて自分の手の届かない所に移動しているのだ。

「姉ちゃん」

 黒妙が心配になって声をかけたが、その声は白妙に届いていない。

 なんとしてもチャトーミを捕まえようと全神経を集中しているのだ。

「やめとけよ、チャトーミが本気で逃げに回ったら虎次郎の旦那だって捕まえられないぜ」

 虎次郎という言葉に白妙はピクンと反応した。

「虎次郎様ですら捕まえられないなんて、そんなことある訳ないでしょ。虎次郎様の瞬歩から逃げおおせる方なんているわけがありません」

 感情的になって白妙は声を荒げた。

「ところがこないだの鬼ごっとの時に、こいつは旦那の瞬歩を躱したあげくに足まで引っかけたんだよ」

「でも兄ちゃん、あの時はあたしもひどい目に遭ったよ。姫様が助けに来なかったら、兄ちゃんに捕まってたし」

 その口ぶりから虎次郎の瞬歩をチャトーミが躱したのは嘘ではないと確信した。

「本当にあなたはなんなんですか!」

 黒妙への怒りなどとうに消し飛び、自分の中の自分でもよく判らないモヤモヤが一気に吹き出す。

「あたしはチャトーミだよ、兄ちゃんの妹で運び屋のチャトーミ」

「でもってわたしのお友達なの」

 チャトーミの影の中からミケラが飛び出してきた。


                    (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ