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2話「城下の黒い影 その11」

 タマーリンはミケラの手を引いて近くの木箱まで行くと、ハンカチを敷いて座りミケラ

を自分の膝の上に座らせた。

 虎次郎は無言でその横に立つ。

「頼もしいナイト様もいて、安心ですわ」

 タマーリンは虎次郎に微笑みかける。

「拙者、姫様の盾であり剣でござる」

 虎次郎がぼそっと喋ると、タマーリンは可笑しそうにコロコロと笑う。

 何故タマーリンが笑ったかは虎次郎には判らなかったが、その理由を尋ねる気にもならなかった。

 虎次郎にとってミケラの側にいられる、それが一番大事なことであり、その事以外に興味は無かったのだ。

「うひゃひゃひゃ」

 遠くでボロ雑巾を引き裂くような男の悲鳴が聞こえてきた。

「そろそろですわね、さっ、ミケラ様参りましょう」

 タマーリンはミケラを膝の上から降ろすと立ち上がり、ミケラの手を引いて供に近くの影まで歩く。

「ミケラ様、準備お願いしますわ。それとあなた、準備なさい」

 ミケラと虎次郎の手を繋がせると、妖精の方を見上げる。




「キタキタ」

 屋根の上で見張っていたミミはこちらに近寄ってくる黒づくめの男を見ながら、タイミングを見計らってシルゥとリーに合図を送る。

「来たじゃん」

「四露死苦!」

 ミミからの合図を見て、シルゥとリーは両手を大きく振ってミケラ達に合図を送った。

「来たようですわ、ミケラ様ご準備を」

 言われてミケラは虎次郎の手を握って気合いを溜め始める。

「うぐぅぅぅぅ」

 唐突にミケラの身体が虎次郎と供に影の中に沈み込み、角の向こう側の樽の横の影から姿を現す。

 ほぼ同時に黒づくめの男が角から飛び出してくる。

 ミケラの隣にいたはずの虎次郎の姿が一瞬にして消え、姿が見えた時には黒づくめの男を地面に組み伏せていた。

 瞬き一つの出来事だ。

 常人の目には瞬間移動したかのようにしか見えない、虎次郎の瞬歩のなせる技だった。

 そこへチャトーラとチャトーミが走り込んでくる。

「おっ、流石旦那」

「流石旦那だね」

 二人に誉められるが、虎次郎はちらっとミケラの方を見る。

「虎次郎凄い、虎次郎偉い」

 ミケラもきゃっきゃっと喜ぶ。

「役目は果たした」

 ニヘラと締まりのない笑みを浮かべて、虎次郎は捕まえた男を差し出す。

「許して下さい、許して下さい」

 男は観念したのか、地べたに座り込むとひたすら許しを請う。

「怖がらなくても、俺たちは別にお前さんを取って食おうって訳じゃないからよ」

 チャトーラが落ち着かせようとしたが、男はブルブル震えてしまって聞く耳を持たない。

「あっ、ドラゴンさんだ」

 と呼ばれて震えていた男が顔を上げる。

「あ、はい、ドラゴンで・・・あっ、お姫様!」

 男は立ち上がるとミケラに駆け寄り手を握ると、

「結婚して下さい」

 チャトーミが瞬時にミケラを自分の後ろに隠し、チャトーラは男の胸ぐらを掴んでミケラから引き剥がす。

「フフフフフ」

 虎次郎はあらん限りに殺気を放ち、背中の刀に手を掛け、ゆらゆらと男へと歩み寄る。

「や、やべぇ」

 虎次郎から発する殺気にチャトーラは背中が汗でびっしょりとなった。


                       (Copyright2022-© 入沙界 南兎)


2023/09/30 一部修正



                    (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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