6話「お妃様の陰謀 59」
「この紙をお膳の上とお膳の周りの床に引いて」
子供の頃、クレヨンで書き損じて机の上まで描いてしまったり、クレヨンを落として床を汚してしまってタマンサに何度も怒られたの経験からのお膳や床の汚れ対策だ。
「あれをかよ、なんでだよ」
「子供がお絵描きすると汚すのよ、それともチャトーラが汚した後をキレイにしてくれるの?言っておくけどクレヨンの汚れなかなか落ちないわよ」
クレヨンの汚れは水拭きでは落ちない、現代ならいろいろな手段があるが、技術が発達していない世界ではそれなりにやっかいな汚れなのだ。
「うっ、やるよやればいいんだろ」
ぶつくさ言いながら紙を床に引き始める。
「わたし達もお手伝いします」
白妙と黒妙が協力を申し出てくれ、更にモモエルとキティー、トランスロットも加わったので瞬く間に終わってしまった。
「準備出来たのでモモエル様、お願いします」
「はい、と言っても使い方は簡単でこうやって直接塗るだけなんですよ」
モモエルがさっさとクレヨンで簡単な絵を描いてみせる。
「それと塗った場所は触らないで下さいね、擦ると汚れが付いてしまいますから」
「擦ると汚れが付く」という部分で小妖精達の目が、キラッと光った。
それを察したのかミミ達の方を睨みながら、
「あんた達、クレヨンで何か悪さしたら承知しないわよ。白妙、あの子たちが悪さしそうになったら遠慮なく叩き落としていいから」
「はい、死なない程度には手加減して叩き落とします」
「任せておいて」
白妙と黒妙の返事を聞いて真っ青な顔をして震え上がるミミ達。
「あたい、あいつら嫌いだ」
「嫌いじゃん」
「四露死苦」
ひそひそと話す三人だが、白妙と目が合った瞬間に、
「ひえぇぇ」
と悲鳴を上げてミケラの後ろまで飛んでいってミケラの髪の中に隠れた。
「ここが安全地帯だ」
「ここなら手出しされないじゃん」
「四露死苦w」
ミケラの背中を安住の地としてほっと一息つく小妖精達。
ミケラは小妖精達を背中に乗せてせっせとクレヨンで絵を描いていた。
小妖精達は背中越しにミケラの描いている様子を覗き込む。
まだ膨らませていない風船にミケラの描いているのは犬のようだ。
「へぇ、上手に描けてる」
「上手じゃん」
「四露死苦^^」
背中の上から誉める。
「えへへへ、ありがとう」
誉めて貰って喜ぶミケラ。
「本当にその犬、上手に描けている」
「じゃん」
「四露死苦」
「ちがうもん、これはお馬さんだもん」
怒ってミケラが両手を上げた拍子に背中から転げ落ちるミミ達。
「あいたた」
「落ちたじゃん」
「よ、よろしく・・・」
「大丈夫?」
床に転げ落ちたミミ達を心配そうに覗き込むミケラ。
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