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6話「お妃様の陰謀 55」

「じゃあ、わたしも先にマオちゃんの型紙作るから工房へ行くわ」

「あっ、わたしも行きます。工房に顔料があったことを思いだしたので、それで絵の具が作れますから」

 文房具店などない時代には絵の具は顔料から自作するものだった。

 絵の具作りが見習いの絵画職人や弟子の仕事で有り、絵の具を作ることで色彩感覚を磨く役割もしていたのだ。

 現代でも市販の色では満足出来ず、自分のイメージ通りの色を出す為に絵の具の色を自作する絵描きがいるくらいだ。

「なんだ、モモエルも来たのか」

「はい、絵の具を作りたくて」

「絵の具か?で、何を作る?」

 顔料を混ぜる溶液によって絵の具の種類が変わるのだ。

「そうですね、ミケラ様達も塗りたがると思うので子供でも扱いやすい水彩絵の具がいいんじゃないかと思います」

「子供が使うなら絵の具よりクレヨンの方がいいんじゃないか?」

「あっ、確かに。ミケラ様が使うなら絵の具よりクレヨンの方が扱いやすいですね」

 クレヨンはろうを溶かして顔料を混ぜて型で固めるだけなので作るのも楽だ。

 溶かして固めるのはモモエルの得意分野なのだから。

「確か、クレヨンの型に使える奴がこの辺に有ったはずなんですが」

 モモエルは棚の下に有る引き出しを開けて中をごそごそと探す。

「有った、有りました」

 クレヨンは金属に印を付ける為に使うので、移動工房にもクレヨンを製作セットは常備しているのだ。

 モモエルはクレヨンを作る為の材料もかき集めると、ろうをナイフで削って皿の上に貯める。

 ある程度溜まった所で片手をかざして力を込めると、ろうが見る見るうちに溶けていく。

「これに顔料を混ぜて」

 手早く顔料と溶けたろうを混ぜて型に流し込む。

 流し込みが終わると、型の上から手をかざして今度は冷却。

「できました」

 固まったクレヨンを型から抜くと、バリをナイフで削ってから紙に巻いて、紙が剥がれないようにのり付けするとクレヨンの完成だ。

「相変わらず見事な手さばきだな」

 モモエルだからこそこんな短時間にで来てしまうが、通常はろうを溶かして更に型に入れて冷やすだけでモモエルの数倍の時間が掛かるのだ。

「ありがとうございます、クッロウエル様」

 クッロウエルに誉められて無邪気に喜ぶモモエル。

「調子にのんな!」

 浮かれているモモエルを叱るクッロウエル。

「こっちにタマンサまで来ちまってるからな、向こうだって困ってるだろ。さっさとクレヨンを作って面倒見に行けや」

 クッロウエルが何故、怒ったかモモエルはその言葉で理解した。

「はい、頑張ります」

 気合いを入れるモモエル。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ、ロレッタもいるし、チャトーラも案外頼りになる子だから」

 ロレッタは小さい頃から家の切り盛りをしていたのでタマンサは信頼していると言うか、いないと生活が成り立たなくなっていた。

「ロレッタは結婚してもお母さんの面倒見に来てね、でないとお母さん飢えて死んじゃうから」

 と言っては毎度、ロレッタにお説教を食らっていたのだが。

 チャトーラも小さい頃からチャトーミと一緒に家に遊びに来ていたのでよく知っていた。

 チャトーミがポワポワとしている分、チャトーラが何かと妹を庇って奮戦しているのも知っていたのだ。


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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