6話「お妃様の陰謀 53」
「わたしね、マオちゃんとみんなに見て貰いたくて練習しているの。それでね、それでね・・・・・・えっと・・・」
説明しようとするが思ったように言葉が出てこなくてマオの方を見る。
「ミケラよ、実際にやって見せた方が良いぞ」
「そうだね、お母さん見ててね」
マオとミケラが揃って並ぶ。
マオが気合いを入れると・・・
「これは使えるわ・・・」
マオとミケラの実演を見てタマンサの目が輝いた。
「ミケラ、マオちゃん。こちらにいらっしゃい」
タマンサが二人を呼ぶ。
「お母さん、なあに?」
「なんの用じゃ?」
「うふふふ、二人にはこういう事して貰いたいの」
タマンサが二人に耳打ちする。
「やる、わたしやってみたい」
「面白そうじゃな、よしのっかたのじゃ」
タマンサの話を聞いて二人は興奮する。
「それじゃあ、マオちゃんの衣装も作らないとね。何か希望は有る?」
「黒、黒くてカッコいいのが良いぞ。何せ、予は魔王じゃからな。魔王と言えば黒じゃ」
「黒くてカッコいいのね、任せておいて」
タマンサは請け負う。
「さてと、服を作るとなると布がいるわね。工房には流石に置いてなかったし、女将さんに聞いてこようかしら」
「待って母さん、まだ開けてない箱があるわよ。お妃様のことだからきっと用意していると思うの。多分、開けたない箱の中に入っていると思うわ」
ロレッタがタマンサを呼び止めた。
「それもそうね、お妃様がわたしにステージに立てと言ったんだから、ステージ衣装を作ることになることも判っているわよね」
タマンサとお妃様は本当に気心の知れた仲のようであった。
「さてと・・・有った、これだけあれば余裕で作れるわ」
開けてない箱を開けると中からカラフルな布地が何枚も出てきたのだ。
「やった、これなら衣装を幾らでも作れるわ」
目を輝かせて喜ぶタマンサ。
「その前に俺の用事を先に片付けさせてくれ」
クッロウエルが声をかけてくる。
「なんですかクッロウエル様?」
「なに、調整した光玉を試さないとな。実際に使ってみないと判らねえこともあるからよ。実際に使う場所でテストだ」
クッロウエルが懐から光玉を出すと、ガムのようなものを付けてステージの上の丸太に押し付ける。
クッロウエルが手を離しても光玉は丸太から落ちない。
「わりいけど、あの光玉に手裏剣を当ててみてくれ」
「はい判りました」
白妙が腰のポーチから手裏剣を一本抜き出すと投げた。
手裏剣は見事光玉を貫通し、同時にそこそこの光と「パーン」という大きな音を立てて破裂した。
その音を聞いた瞬間、その場にいたケットシー全員が尻尾をボワボワに膨らませて凍り付く。
ケットシーは猫の妖精なので猫と同じく大きい音は苦手なのだ。
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