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1話「泉の妖精 その2」

「あれっ、あそこに見えるのが妖精がいるって言う泉か?」

 チャトーラが目を凝らして遠くを見る。

「どこどこ、兄ちゃん見えないよ」

 チャトーミはチャトーラよりかなり背が低いので、遠くにある物は見つけにくいのだ。

「どこどこ?私も見たい」

 更に背の低いミケラにはとうてい見えるはずも無い。

「姫、御免」

 虎次郎はそれだけ言うとミケラの身体を抱えると、自分の肩に乗せた。

「あっ、見えた」

 虎次郎の肩に乗せて貰い遠くの物が見えるようになり、ミケラにも草原の先の方に泉が見えたのだった。

「見えた、見えたよ虎次郎」

 ミケラは虎次郎の肩の上できゃっきゃっと喜ぶ。

 しばらく虎次郎の方の上で泉を見ていたミケラが、

「降ろして」

 と言う。

 虎次郎の肩から降りたミケラは、

「早く行こう」

 と走り始め、みなもその後に続く。

 泉の近くまで来ると、木下の影に羽の生えた小さな人影が三つ浮いているのに出くわす。

「妖精さんだ、あれ妖精さんだよね」

 その姿を見てミケラが喜ぶ。

 その声に聞こえたのか、妖精達が振り向く。

「なによあんた達、ここをあたい達のシマだって知って入ってきたわけ?」

「いい度胸じゃん、ただで帰れるとは思ってないよねじゃん」

「四露死苦」

 いきなり絡まれた。

「うへぇ、ガラわりぃ」

「関わりたくないね、兄ちゃん」

 チャトーラとチャトーミはドン引きし、虎次郎は

「ふん」

 と僅かに鼻を鳴らす。

 ミケラは目をキラキラさせて、

「妖精さんだ、妖精さんだ」

 と一人はしゃいでいた。

「おうおうおう、このガキ、何に見てんだ」

 妖精の一人、ミミがミケラに突っかかった。

「妖精さん」

 それでもミケラはキラキラした目で妖精を見つめる。

「な、なんだこいつは」

 ミミとミケラの目が合う。

 しばらく見つめ合っていたが、ミミは気が付くと花畑の中にいた。

 見た事もないきれいな花が一面を覆っていて、心地良い香りがあたりに立ちこめている。

 この世の物とは思えない美しさだ。

「えっ、ここどこだよ?」

 ミミはキョロキョロと周りを見回す。

 さっきまでケットシーの子供に絡んでいたのに、いつの間にか見知らぬ花畑にいたのだから無理も無い。

「ミミ~~~~」

 どこかで自分を呼ぶ声がした。

 ミミは羽を広げて飛び上がると、あらためて周りを見回す。

 遠くの方に自分と同じ小妖精がいるのが見えた。

「ミミ~~~」

 その小妖精は自分の名前を呼びながら大きく手を振っている。

 ミミは目を凝らしてその小妖精を見た。

「あっ」

 その妖精が誰だかやっと気が付く。

「お姉ちゃん」

 それはミミの姉だったのだ。

 ミミの目から涙がボロボロとこぼれ落ちた。

「お姉ちゃん、会いたかったよ」

 泣きながら姉に向かってミミは全速力で飛ぶ。

「おねぇちゃ~~~ん」

 もう少しで姉の身体に触れそうになった瞬間、誰かに頬を叩かれて目が覚めた。

「ミミ、ミミ、しっかりするじゃん」

 頬を叩かれ、身体を揺さぶられて目を開けると、仲間のシルゥとリーが泣きそうな顔で自分の顔を覗き込んでいるのが見えた。 

「あれ、お姉ちゃんは?」

「しっかりしろじゃん、あんたの姉ちゃんは三年前に死んだじゃん」

「あたい、さっききれいな花畑でお姉ちゃんに呼ばれたんだけど・・・・・・」

 ミミの顔が見る間に真っ青になる。

「あたい、あのケットシーの子供の目を見ていただけなのに」

 恐怖に引きつった顔でミミはミケラの方を見た。

「うん?」

 ミケラが不思議そうにミミ達の方を見、目の合った瞬間、ミミは恐怖でシルゥ達に抱きついた。

「姫様に毒気を抜かれて死にかけるとか、こいつら本当に妖精かよ」

 チャトーラが呆れた顔で小妖精達を見た。


著作権表記追加                       (Copyright2021-© 入沙界 南兎)


2023/09/21 修正

        修正をミスったので再修正



                        (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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