6話「お妃様の陰謀 46」
それから皆はそれぞれ練習を始めた。
「ロレッタ、わたしはしばらくモモエルのとこに行っているから、みんなの面倒お願い」
それだけ言うとロレッタの返事も待たずに広間を出て行ってしまう。
「ちょっと母さん」
とロレッタが口にした時は、既にタマンサの姿は見えなくなっていた。
「もう勝手なんだから」
と文句を言いつつ、ミケラとサクラーノが危ないことをしないよう目を離さないようにする。
昼間の一件で、小さい子供は一瞬の油断で取り返しの付かないことになると、心底思ったからだ。
白妙と黒妙も自分たちの練習の合間にミケラとマオの練習を見ていた。
「ホント、よくこんな事思いつくよね」
「マオの発想力には本当に舌を巻くわ」
ミケラ達の練習を見ながらマオの発想力を誉める二人。
「予には眼鏡でベレー帽をかぶった神様が付いておるからのう。わははははは」
白妙と黒妙の声が聞こえたのか、無駄に高笑いするマオ。
魔王に神様から啓示があるのもどうなんだろうかと思いつつ、そこは敢えて突っ込まない白妙。
「それならわたし達の出し物にアイディア出して貰おうよ」
「そうね、わたし達じゃマオみたいな発想力ないものね」
白妙と黒妙はマオに頼み込む。
「仕方ないのう、たっての頼みを断るわけにはいかんからの。よっしゃ、任せておくのじゃ」
マオはあっさりと請け負う。
「とは言え、直ぐ出てくるものではないからのう。取り敢えず、二人の手裏剣の腕を見せてくれんかのう」
「構いませんよ」
「あいよ、任せて」
白妙と黒妙は承諾する。
確かにどの程度の腕前か判らなければアドバイスのしようもないからだ。
「どっちからやる、姉ちゃん?」
「先に的を用意しないと、壁に穴を開けたりしたら怒られるでしょ」
白妙に言われて、
「うっ、確かに」
旅館の壁に穴を開けてその請求書がお妃様に回ったら、間違いなく正座させられて延々お小言を貰うことになる。
とは言え、白妙達はそれほど裕福ではないので、修理費はお妃様に払って貰うしかない。
この旅行も一応任務扱いなので、任務中の事故扱いとして経費で落とすことは出来る。
実際、これまでも黒妙が壊してきた諸々を、お妃様は経費と扱いで支払ってきてくれている。
但し、そのたびにお説教の時間が延びているのは気の所為ではないだろう。
「経費で落ちても、延々お小言は嫌だ」
黒妙が慌てて的になりそうなモノを探しに走る。
「これなんてどうかな}
お膳の上の食べ残しの果物を幾つか持って戻ってくる。
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