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2話「城下の黒い影 その9」

「わたし持ってる?持っているってなぁに?」

 不思議そうな顔で妖精達を見上げる。

「持っているって言うのは・・・・・・」

 聞かれてチャトーラは言い淀む。

「ミケラ様、持っているというのは庶民の言葉で幸運を持っていると言う事ですわ」

「幸運を持っている?私って運が良いの?」 

「はい、とても良い運を持っておいでですわよ」

「わーい、わーい」

 ミケラは喜び飛び跳ねる。

「しーっ、ミケラ様、大声を出すと気が付かれてしまいますわ」

 慌てて手で自分の口を塞ぐミケラ。

「取りあえず、あの男を拘束すれば宜しいのね」

「おう」

「はい、バインド」

 軽い調子でタマーリンが呪文を口にすると、黒づくめの男が突然硬直して動かなくなる。

「すげぇ、魔法の呪文てそんなに簡単でいいのか?俺はもっとご大層な呪文を唱えると思っていたぜ」

 あんまりにもあっさりと発動したのでチャトーラが驚きの声を上げた。

「魔法の呪文と言うのはですね、呪文を唱える事で精神を集中する為にしますのよ。集中する事でこれからことわりに干渉するのに必要な魔力を引き出す為に行うのですわ。わたくしくらいになれば圧縮呪法で殆どの呪文は魔法名を唱えるだけで発動しますのよ」

 との説明にチャトーラは「へ~」としか答える事が出来なかった。

 はっきり言ってしまえば、タマーリンがどれほど凄いかを理解出来なかったからだ。

「タマーリン凄い」

 王宮にいる見習い魔法使いがろうそくに火を付けるだけでも苦労しているのを見ているミケラは、無邪気に褒める。

「ミケラ様、ありがとうございます」

「兄ちゃん、あいつ動き出したよ」

 チャトーミの言葉に驚いてタマーリンが顔を上げる。

 バインドで動きを封じたはずの男がすたこらさっさと逃げていく姿が見えた。

「あの男、何者ですのぉぉぉ」

 悲鳴に近い叫び声を上げる。

 ケットシー王国は基本平和な国だ。

 一部を除けば、さほど危険な獣もいないし、出たとしても被害が出る前に駆除されるのが殆どだった。

 たまに道に迷ったドラゴンが近くに降りてきて騒ぎになるが、そのドラゴンを追い返すのが魔術師の役目だったのだ。

 タマーリンも、何度か迷いドラゴンをバインドで拘束した事があったので、黒づくめの男があっさりと拘束を解いて逃げ出したのは驚くなという方が無理というモノだった。

「まだこの距離なら」

 再びバインドを放つが、男は一瞬ビクッとしただけで今度は拘束されずに曲がり角へと姿を消してしまった。

「わたくしのバインドを無効化して逃げるとは、あの男ただ者ではありませんわ」

 タマーリンが心の底から驚いた表情を浮かべる。

「どこかで会ったような気がする」

 唐突のミケラの発言に皆が驚いてミケラを見た。

「姫様、あんな変な男にどこで会ったんだ?」 

 聞かれたミケラはしばし考えたが、

「えへ、わかんない」

 明るく元気に答えた。

「さてと、これからどうするよ」

 チャトーラは話題を変えた。

「わたくしのバインドが効果ないのですから、遠距離からの拘束は無理ですわね」

 タマーリンの言葉に皆が頷く。


著作権表記追加                       (Copyright2022-© 入沙界 南兎)


2023/09/30 一部修正



                     (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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