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6話「お妃様の陰謀 41」

 タマンサは裁縫以外の家事はからっきしダメなのだった。

 それでも努力して掃除と洗濯はなんとか見られる程度にはなったが、料理は努力の甲斐なく上達せず、ロレッタがモノ心付く頃から父親を手伝って台所に立っていたのだ。

 さらに壊滅的にダメだったのが金銭感覚。

 店で奨められると値段も聞かないで買ってしまうのは序の口で、困っている人を見ると財布ごと上げてしまうのが日常茶飯事だった。

 子供の頃からお妃様に付いて歩いていたので金銭感覚が完全に麻痺していたのだ。

 ゆえにタマンサには財布を持たせない、それが家のルールとなり、父親が死んでからは家計管理と料理はロレッタが一人で切り盛りしてきた。

 噂話好きを除けばロレッタは真面目で実直な性格だからこそ出来たことなのだろう。

「兎に角、わたしは舞台には上がらないから」

 そう言い放つとロレッタはそっぽを向く。 

「あらあら、お話が弾んでいるようですね」

 そこへ宿の女将が仲居を引き連れてやって来た。

「あら女将さん、なんですの?」

「皆さんにこれを召し上がっていただこうと思いまして」

 仲居達の手に持っているお盆の上にはお菓子やら果物が山盛りに乗せられていた。

「頼んでいませんわ」

「いえいえ、これは冷蔵庫を直すのを手伝っていただいたお礼です。冷蔵庫は旅館の大切な財産ですから」

「冷蔵庫を壊したのはサクラーノですから、修理を手伝うのは当然です。それに対してお礼を頂くわけにはいけません」

 タマンサが断ろうとするが、

「お嬢さんが壊さなければならない事態になったのは、うちの仲居の不始末が原因ですから。これはそのお詫びでもあるので、どうぞお召し上がり下さい」

 女将が深々と頭を下げる。

 それ以上断ることは出来なかった。

「それでは遠慮なく頂きます」

 女将の方もその言葉にほっとして、仲居達に合図を送り、仲居達はお膳の上にお盆を置いて去って行った。

「お母さん、食べていいの?」

 サクラーノがタマンサを見上げる。

「いいの?」

 ミケラも見上げている。

「いいのかな?」

 チャトーミも見上げていた。

「はいはい、いいわよ」

「わーい」

 ローテーブルの周りに張り付く三人。

「お嬢さんに怪我無くて本当に良かったですわ、お嬢さんにもしものことがあったらと思うと身の縮まる思いです」

 女将はにも子供は居るので、もし自分の子供が同じ事になったらと思うとぞっとした。

「そうですわね」

 タマンサも思いは同じだった。

 ケットシーは寒さに弱い、人間なら我慢出来る寒さでもそこに何時間も閉じ込められたらどうなっていたか判らない。

 まして体力の無い子供なら・・・


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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