6話「お妃様の陰謀 38」
「だったら姫様、今度はわたしと行こう」
チャトーミがニコニコ笑いながら提案する。
「わ~っ、行こう、行こう」
「行こう、行こう」
ミケラとサクラーノは大喜びするが、
「チャミとはダメだよ」
ロレッタが止めた。
「なんでロレッタ?大人とならいいんでしょ、あたし17だからもう大人だよ」
この世界の成人は17歳なので、チャトーミはもう大人である。
「年齢だけ見ればね、でも頭の中身は子供と変わらないじゃない」
「ひっどい、あたしのどこが子供なのよ。ひどいと思うでしょ姫様」
ミケラに助けを求める時点でどうかと思うぞチャトーミ。
「チャトーミは大人だよね」
「そうだよ、わたし達より大きいもん」
「ねーっ」
6歳児二人と息ぴったりのチャトーミ。
それを見て深く溜め息をつくチャトーラ。
「あんたも苦労するわね」
タマンサがぽんとチャトーラの肩を叩いた。
「モモエル、あれを運び込ませた理由を教えてくれるんだよな?」
宿の部屋に戻り、皆が落ち着いた頃にクッロウエルが移動工房をモモエルが運ばせた理由を聞いてきた。
「はい、クッロウエル様これを見て下さい」
モモエルがクッロウエルの前に図面を広げた。
ラフ画であったがクッロウエルは興味深くその図面を見る。
「なるほど、こいつで配膳を楽にしようって訳か」
モモエルの引いた図面は配膳用ワゴンの図面だった。
王宮では使われているが、まだ一般には出回っていない。
「車輪を太くしてあるのは絨毯対策か、工夫はしてあるな」
宿の廊下は絨毯が引いてあるので王宮で使われているモノをそのまま使うと絨毯に車輪が沈んで扱い難くなってしまうのだ。
「このままでもなんとかなりそうなんだがよ、もう一工夫欲しい気がする。俺の勘だけどよ」
「そうですね、物作りでクッロウエル様の勘は良く当たりますから」
二人は図面を見つめ直す。
「図面であれこれ考えても判らん時は、造ってみるのが一番だからな」
クッロウエルも乗る気なのが伝わってきてモモエルはほっとする。
まだまだ経験の浅いモモエルにとって、クッロウエルは物作りの師であり目指す存在なのだ。
その師が手伝ってくれるとあらば、これほど心強いことは無い。
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