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2話「城下の黒い影 その8」

 タマーリンの目の前が再び明るくなった時には、見知らぬお花畑の真ん中に立っていた。

「あらぁ、わたくしいつの間にこんなお花畑に来たのでしょう?」

 見渡す限り、今まで見た事もない美しい花で埋め尽くされ、花からはかぐわしい香りが辺り一面立ちこめていた。

「なんて美しいお花なんでしょう、わたくし今までこんなに美しいお花を見た事がございませんわ」

 タマーリンは微笑みながら花を一輪手に取る。

「タマーリンや~い」

 名前を呼ばれ、タマーリンは顔を上げて声の聞こえた方を見た。

 視線の遙か先にぼんやりとした影が見えたが、その影が次第にはっきりとして姿形が判るようになる。

「おじいさま」

 それはタマーリンがまだ子供の頃に亡くなったおじいさんだった。

「おじいさま~~~」

 タマーリンが駆け寄ろうとして、何かに突然顔を殴られた。

「いた」

 タマーリンは立ち止まって殴られたところを手で押さえた。

 しかし、それでも殴打は止まらず顔のあちこちを殴られる。

「いたたたた、なんなんですの~~~~」

 タマーリンは絶叫と供に目を覚ます。

「やったぜ、目を開けたぜ」

「良かったじゃん」

「四露死苦、四露死苦」

 妖精達がタマーリンの顔の上ではしゃいでいた。

 どうやら顔を殴っていたのは妖精達のようだ。

「あんた、姫さんの目を見つめちゃダメだぜ」

「浄化されて魂持ってかれるじゃん」

「よ、四露死苦」

 ミミ達は怯えた目でミケラを見た。

「魂?浄化?わたくしの魂がミケラ様に?」

 理由は判らないが今のお花畑がミケラの影響だというのは理解したタマーリンは、ミケラを改めて見た。

 その目には怯えた様子はない。

「気が付いたか、タマーリン。おめぇもこいつらの同類とか、驚きだぜ」

「本当にびっくりだね、兄ちゃん」

 と言いつつ二人は大笑いをする。

「タマーリン、大丈夫?」

 ミケラも心配してトコトコと歩いてきた。

「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしましたミケラ様」

 タマーリンは立ち上がると、ミケラから少し離れてから服のほこりを払う。

「さあ、参りましょう。ミケラ様、お手を」

 タマーリンがミケラの手を取って歩き始める。

 敬愛する主君の手を引いて歩くような、そんな雰囲気をタマーリンは纏っていた。

「おい、ちょっと待てや」

 他の面々も慌ててその後に従って続く。

 しばらく歩くと十字路に出た。

「ミケラ様、どちらに参りましょう?」

 聞かれてミケラは、

「う~んと、う~んと」

 しばし迷って、

「こっち」

 指を指す。

「はいかしこまりました、皆さん参りますわよ」

 ミケラの手を取ってタマーリンが先頭を歩き、皆もそれに従う。

 それからさほど歩かない内に影でこそこそしている黒づくめの男を見つけた。

「流石姫さん」

「持ってるじゃん」

「四露死苦、四露死苦」

 妖精達はミケラを囃し立てる。


著作権表記追加                       (Copyright2022-© 入沙界 南兎)


2023/09/30 一部修正



                     (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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