6話「お妃様の陰謀 27」
「もうダメ、力が出ない」
サクラーノは三度目の体当たりの後、ばったりと倒れてしまう。
「サクラーノ、サクラーノ」
ミケラが慌てて駆け寄る。
「どうしよう」
ミケラが困って顔を上げた時、光が差しているのに気がつく。
サクラーノの三度の体当たりに扉が僅かに開き、隙間から光が入ってきているのだ。
ミケラは隙間に顔を押しつけ外を見た。
「あれなら使える」
ミケラの視線の先に影移動に使える大きさの影が見えた。
ミケラはサクラーノの身体を掴むと力を貯める。
二人の身体が冷蔵庫の闇の中に沈み込み、外の影から現れた。
「ミケラ~~~!」
そこへキティーを抱えたマオが飛び込んできた。
「離して、離して下さい」
サクラーノが倒れているのを見てキティーは、抱えているマオの手を振り払って飛び降りるとよろけながらサクラーノに駆け寄る。
「サクラーノ、サクラーノ」
ミケラは動かないサクラーノの身体にしがみついて泣き叫ぶ。
このままでは治療に取りかかれない。
マオに遅れて白妙と黒妙が部屋に飛び込んできた。
「治療が出来ないから、ミケラ様をサクラーノから引き剥がして下さい」
状況を素早く判断した二人は、
「ミケラ様失礼します」
と言ってからミケラをサクラーノから引き剥がす。
「ヤダヤダ、サクラーノ」
泣き叫ぶミケラ。
タマンサもようやく到着し、倒れているサクラーノと泣き叫ぶミケラを見てパニックを起こしてしまう。
「しっかりして下さいお母さん」
身体の小さなキティーから出たとは思えない迫力のある声でタマンサを諫める。
「サクラーノはわたしがなんとかします、大丈夫、任せて下さい。なのでお母さんはミケラ様をお願いします」
キティーの言葉に落ち着きを取り戻したタマンサはミケラの方を見た。
タマンサと目が合った瞬間、白妙達の手を振りほどいてミケラはタマンサにしがみつき、「お母さん、サクラーノが、サクラーノが」
と激しく泣きじゃくり始めた。
「大丈夫よ、サクラーノはあのお姉ちゃんが治してくれるから。ほらほら、泣かないで」
タマンサはミケラの身体を抱きしめると、優しく髪を撫でる。
「サクラーノ大丈夫?元気になる?」
「大丈夫よ、あのお姉ちゃんが凄い魔法でサクラーノを元気にしてくれるのよ」
キティーのハードルが上がった。
「本当に本当?」
「本当よ、だからここで見ていましょうね」
「うん」
ようやくミケラは落ち着き泣き止む。
「落ち着け、落ち着けわたし」
皆の視線が集まる中、キティーは自分を落ち着かせるように深呼吸をする。
意識を集中させてサクラーノの手を取り、診断魔法を発動させた。
そのままサクラーノの手を握って、反応が返ってくるのを待つ。
皆が見守る中、キティーの硬かった表情がほっと緩んだ。
「あの、サクラーノは?」
ミケラを抱えたタマンサが心配そうにキティーに聞く。
「大丈夫です、力を使い果たして気を失っただけですから。怪我もありません。子供を無理に魔法で回復させるのも何なので、ゆっくりと寝かせて上げて下さい」
ほっとするタマンサ。
「すみません、護衛役のわたし達が目を離したせいでこんな事になって」
タマンサに頭を下げる白妙。
「目を離したのはわたしも同じよ、小さい子は一瞬でも目を離すといなくなるのを知っていたのに・・・わたしこそ母親失格だわ」
小さい子供は一瞬目を離しただけで姿が見えなくなる、それはロレッタやトランスロットで散々経験したことなのにとへこむタマンサ。
「サクラーノを部屋まで運んで、寝かせてくれるかしら。わたしはしばらくミケラが離してくれそうもないから」
ミケラはタマンサが抱える手をしっかりと握っていたのだ。
「はい」
白妙と黒妙がサクラーノを抱え上げようとした時、
「はひぃ、はひぃ・・・・・・み、ミケラさまぁぁぁ」
ヘロヘロのモモエルがようやく到着した。
後書きのコーナー
今回はセリフの話。
セリフの作り方というわけではなくて、台詞を考えるときに声がつくキャラとつかないキャラが居るんですよね。
ミケラ、サクラーノ、チャトーミ、小妖精たちなんかは声無しでセリフ考えてます。
声がつくのがタマーリン(斎藤千和)、虎次朗(宮野真守)、モモエル(早見沙織)、マオ(久野美咲)こんな感じですね。
台詞に声つけたほうがタマーリンなんてポンポンセリフが湧いてきて楽しいいです。
みなさんも上の声優を参考に脳内変換して声付きで読んでみるのも楽しいいかも。
それではまた来週(^_^)/~
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