6話「お妃様の陰謀 25」
「サクラーノ、どこに行くの?」
サクラーノに手を引かれてミケラは廊下を歩いていた。
「冷蔵庫」
「れ、れいぞうこぉ!」
その言葉にミケラにミケラの瞳がキランと光った。
「冷蔵庫凄いよね、あんなに食べ物が入っていてびっくりしちゃった」
「それに寒くて不思議だったよね」
「うん、不思議だった」
ミケラもサクラーノも初めて見る冷蔵庫にワクワクと不思議さが一杯詰まった、魔法の部屋に見えていたのだ。
「ここだったよね?」
サクラーノが不安そうにミケラに聞いた。
「うん、たぶん」
モモエルの後を付いて歩いただけなので、実はいまいち場所を覚えていなかったのだ。
「いっけない、忘れ物」
仲居が先の方の部屋から飛び出してきて、二人とは反対方向へ走り去っていく。
「あそこじゃない?」
ミケラが仲居の出てきた部屋を指さす。
「行ってみよう」
「うん」
二人は手を繫いで仲居の出てきた部屋を覗いてみると、願い通りに冷蔵庫が有った。
「扉開いてるね」
しかも冷蔵庫の扉が開きっぱなしになっているではないか。
「開いてるね」
二人はそのままとことこと冷蔵庫の扉の前まで歩く。
「一人で入っちゃダメなんだよね」
「誰かと一緒でないとダメなんだよ」
二人は顔を見合わせてニカァと笑う。
「わたし達二人だから」
「入っても怒られないよね」
二人は手を繫いで、意気揚々と冷蔵庫の中に入っていく。
「うぉぉぉ、やっぱ凄いね」
「うん、食べ物が一杯」
二人は目を輝かせて冷蔵庫の奥へと進む。
別に食べたいわけではなく、こんなに大量に食べ物が置いてあることが珍しくて仕方ないのだ。
二人は目をキラキラと輝かせながら、奥へ、奥へと入っていった。
「やっぱり冷蔵庫開けっぱなしだった、女将さんにどやされちゃうわ」
さっき出て行った仲居が冷蔵庫を開けっぱなしだったの思い出し戻ってくると、いきなり冷蔵庫の扉を閉めてしまう。
扉が閉まると同時に魔力灯が消えた。
「ひゃぁ」
「わぁっ」
唐突に周りが真っ暗になって悲鳴を上げるミケラとサクラーノ。
「どうしよう」
「暗くて怖いよ」
恐怖で抱き合う二人。
抱き合うことが互いの温もりを感じ合う。
サクラーノの温もりに安心したのか、ミケラの身体が僅かに光を放ちサクラーノの身体を包み込む。
その光はサクラーノを身体を包み込むと更に輝きを増す。
とは言え、その輝きはほんの僅か。
ろうそくの明かりにすら遙かに及ばない儚い光ではあったが、暗闇の中に突然放り出された二人にとっては救いの光。
真っ暗で何も見えない中での光は、たとえ僅かな光でも人の支えとなるのだ。
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