6話「お妃様の陰謀 22」
「そ、それで冷蔵庫の方は?」
モモエルはチュ○ルを目の前にした猫のような状態で女将さんに聞く。
飛びかからないように白妙と黒妙がなんとか押さえつけられながら。
「はいはい、聞いてますよ」
今にも飛びかかってきそうなモモエルを前にして、女将はにこやかに答える。
「調理場の方も今は休息時間ですから冷蔵庫を見るくらいなら」
女将は手招きしてから歩き出す。
「冷蔵庫、わたしも見たい」
「わたしも」
ミケラとサクラーノもモモエルの後に続いた。
「わたしも行かないと、保護者だもん」
ウキウキしながらタマンサも続き、結局みんなその後に続く。
冷蔵庫は調理場の隣にあった。
冷蔵庫の入り口は金属製のドアで出来ていて、金属の閂でしっかりと止められている。
金属製の扉はきれいに磨かれてはあったが、所々擦れた後がありそれが年期を感じさせた。
「ふ~~ん」
冷蔵庫に来るまで興奮状態だったモモエルは、冷蔵庫の前に来ると冷静な表情に一変。
「これは30年くらい前に造られたモノですね」
「はい、確かに。30年程前にクッロウエル様が突然現れて『女将、面白いもんを思いついたから造って良いか?』と言って、こちらの返事も待たずに造り始めたモノなんですよ」
女将は笑いながら説明した。
「流石クッロウエル様です。モノ造りにかける情熱、このモモエルもしっかりとお手本にさせていただきます」
モモエルが前所長の行いに激しく感動する。
「まあ、あなたもクッロウエル様と同じ、モノ造りのためなら人の迷惑おかまいなしなのですね」
「はい、ありがとうございます」
褒められてないぞモモエル。
女将は気にもせず、ニコニコと笑っていた。
「中へ入ってみます?」
「お願いします」
女将が金属製の閂を重そうに外して、
「よっと」
扉の取っ手に体重を乗せて手前に引く。
最初は微動だにしなかった扉がゆっくりと開き始め、途中からはかなりスムーズに開いていった。
「ふ~~~っ、最初に力がいるのがこの扉の欠点ね」
と言いながら女将は皆を冷蔵庫の中に招き入れる。
冷蔵庫の中は、扉が開くと同時に設置されている魔力灯が光を放ち始め、冷蔵庫内を明るく照らし出していた。
「思っていたより広いな」
「倉庫の冷蔵庫には負けるが、それでも広いのじゃ」
倉庫は15畳程の広さがあり、整然と棚が並べてられており、棚にいろいろな食材が乗せられていた。
「うわ~凄い」
「いろいろな食べ物が置いてある」
ミケラとサクラーノが目をキラキラさせて、食べ物で一杯の棚を見上げた。
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