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2話「城下の黒い影 その7」

 タマーリンの手を引くミケラの後ろに付き従って虎次郎は歩く。

 しかし、その尻尾はブンブンと激しく振られていた。

「旦那も大人げないね」

「姫様とタマーリンが楽しそうだから、焼き餅焼いてるね兄ちゃん」

 チャトーラとチャトーミは聞こえるのも気にせず、大きな声で笑う。

 それを聞いていたタマーリンがにやっと笑い、ポケットからハンカチを出すとミケラの前にしゃがみ込む。

「ミケラ様、お顔にほこりが付いてますわ。わたくしが拭いて差し上げましょう」

 ハンカチでミケラの顔を拭く。

 拭きながら指先でミケラのほっぺたを指先でプニプニする。

「まあぁ!ミケラ様のほっぺってプニプニしてとても柔らかのですわ。まるで羽根枕のようですわ」

 ことさら大きな声で驚いてみせる。

 それを聞いた虎次郎の耳がイカ耳となり、尻尾は更に激しく振られた。

「やべ」

 それを見て、虎次郎が爆発寸前と察したチャトーラが素早く虎次郎の横に駆け寄った。

「まあまあ旦那、例の黒づくめの男、旦那が捕まえれば姫様も喜びますぜ」

 チャトーラが虎次郎の耳元で囁く。

「そうそう、旦那が捕まえれば姫様も大喜びだよ」

 チャトーミも反対側から囁きかけた。

 ブンブン振られていた虎次郎の尻尾がピーンと立つ。

 これは猫がめちゃくちゃ喜んでいるサインなのだ。

「あいつチョロくね?」

「チョロ次郎じゃん」

「チョロ死苦」

 上からその様子を見ていた妖精達がヒソヒソ囁きあう。

「でもさ、あのムチムチ姉ちゃん」

「他人とは思えないじゃん」

「四露死苦」

 タマーリンも微笑みながら妖精達に小さく手を振る。

「タマーリン、おめぇ性格わりいな」

 チャトーラが呆れたような声を出す。

「わたくしはただ、ミケラ様のお顔にほこりが付いていたので拭いて差し上げただけなですわよ。何かいけない事をしましたのでしょうか?」

 一瞬間を置き、

「それともミケラ様のお顔にほこりが付いているのを気が付かないふりをしろとおっしゃるの?そんな事、わたくしには出来ませんわ」

 涙目で訴えるタマーリンにチャトーラは何も言えずに、

「いや、わ、悪かったよ」

 とすごすごと引き下がる。

「兄ちゃん、カッコわる」

 チャトーミにダメ出しされ、更に落ち込むチャトーラ。

「わ、判って下さったなら、わたくしはかまいませんわ」

 と言いつつ涙をハンカチで拭きながら舌を出すタマーリン。

 ふと下を見ると、キラキラと目を輝かせて見上げているミケラと目が合った。

「タマーリン、いま舌を出していた。なんで?なんで?」

 興味津々にキラキラしたミケラの目と見つめ合っているうちに、タマーリンの目の前が突然暗くなった。


著作権表記追加                       (Copyright2022-© 入沙界 南兎)


2023/09/30 一部修正



                      (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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