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6話「お妃様の陰謀 19」

「坊主、やってみろ」

 クロのじいさんはトランスロットに火起こしの道具を押しつけて寄越す。

「で、でも」

「大丈夫だ、最初はうまくいかなても何回もやればうまくなる」

 有無を言わさない迫力にトランスロットは頷いてしまう。

「よしよし、その壺の中から少しだけ草を出してその皿の上に乗せてみろ」

 壺の中から草をひとつまみ出して皿の上に乗せる。

「少しほぐしてな、そうそうそんな感じ・・・なかなか手際がいいじゃないか」

 クロのじいさんに褒められて少し笑顔を浮かべるトランスロット。

「次はそれで火花を飛ばす・・・」

 言われるままに渡された道具をこすってみたが、ほとんど火花を飛ばなかった。

「がはははは、わしも最初はそんなもんじゃったよ。力より素早さじゃ、こんな感じに素早く擦る」

 クロのじいさんが素早く手を動かしてみせる。

 言われるままにトランスロットは素早く擦ると、さっきより多くの火花が飛んだ。

「飛んだ、さっきよりたくさん火花が飛んだよ」

 嬉しそうに喜ぶトランスロット。

「そうだ、そうだ。うまいぞ」

 クロのじいさんも一緒になって笑う。

「棒に押しつけるんじゃなくてな、素早く滑らせるように擦るのがコツだ、そうすればもっと火花が飛ぶからな」

「うん」

 言われるように素早く滑らせるように擦ってみる。

 大量の火花が飛んだ。

「よしっよしっ、いいぞ。飲み込みが早いじゃないか、後は同じ要領で何度も火花を飛ばせば火が着くぞ」

「はい」

 トランスロットは続けて何回も火花を飛ばす。

 数回目に草に小さな火がともる。

「止め、次はその火を消さないように息をそっと吹きかけるんだ」

 トランスロットはゆっくりと小さな火に息を吹きかけると、小さな火は息を吹きかけるたびに広がり、やがて草が燃え始めた。

「次はこの切りくずを乗せるんだ、少しでいいからな」

 切りくずが乗せられ、火が移る。

「細かい薪を乗せて終わりだ。いっぺんに乗せると火が消えるぞ、消えないように火の具合を見ながら乗せるんだ」

「はい」

 細かい薪が乗せられ、薪にも火が移ると、

「うまいうまい。よし、練習はこれで仕舞いじゃ。本格的に火起こしをするぞ、着いてこい」

 クロのじいさんはトランスロットの起こした火を消すと、トランスロットを従えて小屋の外へ出た。


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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