6話「お妃様の陰謀 18」
「でもよ、仕事の方はやっておくってどういうことだ?」
チャトーラ達は街から街への手紙を配達する仕事をしている。
「偉そうな婆さんて、お妃様のことだよ。あの方ならどこでも影移動で行けるから」
お妃様は一度行ったことのある場所なら、かなり遠くまで影移動で移動出来るのだ。
チャトーラやチャトーミが走って届けるよりよほど早い。
ロレッタに話を聞いて、
「あの婆さんがお妃様か」
驚くチャトーラ。
「知らなかったの?」
「おうよ、偉いさんとは縁が無いからな」
変な所を威張るチャトーラであった。
「そう?結構街の中をふらふら歩いているけどな」
ロレッタは子供の頃からお城を抜け出しては、タマンサと楽しそうにお茶をしていたお妃様の姿を思い浮かべた。
チャトーラとチャトーミはミケラ達と奥に向かうと、
「あら、あなた達も捕まったのね」
タマンサが笑顔で出迎えた。
「それじゃ、これに着替えて」
着物を手渡される。
「あの婆さん、こんなもんまで用意してたのかよ」
「あの方は、遊びでも妥協しないから」
タマンサの言葉に、
「やれやれだぜ」
と溜め息をつくチャトーラ。
「男の方は下働きをして貰うのでこちらに来て下さい」
着替え終わると仲居に連れられてチャトーラとトランスロットは宿の裏手に来る。
「クロのじいさん、この二人の面倒見てやっておくれよ」
「ああ、例の奴か」
真っ白なひげ面のドワーフの老人がおんぼろな小屋の中から姿を現した。
「わぁったよ、女将にも頼まれてるからな」
「じゃあ、お願いね」
仲居は宿の方に戻っていった。
「おまえら、こっち来いや」
クロのじいさんは二人を手招きする。
「お前ら何が出来る?」
「何が出来るって、俺は走るのが得意だけどな」
「そうか、じゃ足腰は丈夫だな?」
「ああ、俺の蹴りはすげえぜ」
ちょっと得意げに返事をするチャトーラ。
「じゃ、向こうにある薪を全部そこの中に運んでおいてくれ」
クロのじいさんは薪の山を指さしてから薪小屋の方を指さす。
「あれ、全部か?」
チャトーラはげんなりした顔で聞いた。
「さっさとやんな、日が暮れちまうぞ」
「判った、判ったよ」
怒鳴られて慌てて薪運びに行くチャトーラ。
「坊主、お前はこっち来い」
トランスロットを呼び寄せる。
「お前、薪で火は起こせるか?」
トランスロットは首を横に振った。
街では炭を使って煮炊きをする、炭には魔力を込めた着火装置で火を付けるので薪を使って火起こしなどしたことが無い。
なのでトランスロットは火の起こし方どころか、薪を何に使うのかも知らなかった。
「街のお坊ちゃんじゃそんなもんか」
クロのじいさんは軽く溜め息をついたが直ぐに表情を変えた、
「これから坊主に火の起こし方を教える、火ってのはな文明の第一歩なんだぜ。火を起こすってのは文明を起こすのと同じなんだ・・・なんてな、冗談だ」
ガハハはと笑う。
「ちょっとやってみせるからよく見ておけ」
「うん」
ドワーフは乾燥した糸くずのような草を壺の中からひとつまみ出して皿の上にのせると、片手に黒い棒、片手に金属の板を持ってこすり合わせた。
火花が激しく散って皿の上の草に降り注ぐ。
何度か火花を散らすと、やがて草の一部がポッと赤くなる。
「よっし」
火花を散らす手を止め、ドワーフは軽く草に息を吹きかけた。
僅かな赤が炎に変わると、細く刻んだ木のくずを優しく乗せる。
木のくずに火が移ると少し細い木を火を消さないようにそっと乗せていく。
「まっこんなもんだ」
クロのじいさんは起こした火の上から金属の覆いをかぶせて火を消す。
後書きです
ペイパービューが10000を超えました。
これも読みに来てくれる皆さんのおかげです。
最近見た映画の中で、作家が謙遜しすぎるのは読んでくれる読者に失礼だという話があって、
自分の中で心に響いたのであまり謙遜しないようにしますよ。
でも、一週間で3話、1話1000文字位というルールで始めたこの話ですが、週末にいっぺんに
投稿している今ではどうかなと思うのですが、スマホの方もいるのでスマホから長い文は読み
難いので最後までこのルールで押し通します。
ではまた来週
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