6話「お妃様の陰謀 16」
朝食が終わった後、広間に残って待っていると仲居達がカラーボックスより少し大きい木の箱を持ってやって来た。
「なに?なに?」
ミケラとサクラーノが箱に駆け寄る。
「こらこら、邪魔しちゃダメよ」
ロレッタが二人を抱き止めた。
「お嬢ちゃん達、ちょっと待っててね」
女将が箱の蓋を開けると、中には女将や仲居が着ているのと同じ着物が入っていた。
「これは?」
「皆様の分です」
どうやらこれを着てここで働くことになるようだ。
「それではお渡ししますね」
女将がそれぞれに合うサイズの着物を手渡していく。
「わたし達の分どころか、ミケラやサクラーノの分まであるのね。これは面白くなりそう」
嬉しそうに笑うタマンサ。
「なんであたい達の分まで入ってんのよ」
驚くミミ達。
小妖精達の分までしっかり入っていた。
「倉庫の女将に売られたじゃん」
「四露死苦(怒)」
この三人は倉庫の女将に勧められて付いて来たので、事前に着物など用意出来るはずが無いのだ。
それが用意されていると言うことは、
「お妃様と倉庫の女将さんは昔からの知り合いだから、裏で手を回されたのね」
初めからお妃様と倉庫の女将さんとはグルでミミ達をこの旅に送り出したと言うことなのだろう。
「あれ?着物が二着余ってる」
大柄な男物と小柄な女物が一着ずつ、箱の中に残っていた。
「すみません、誰かいますか?」
玄関の方から足技の得意な海賊船のコックのような声が、奥まで聞こえる大声を張り上げた。
「あら、こんな朝早くどなたかしら?」
女将が玄関に向かう。
「なんか聞き覚えのある声?」
ロレッタは気になって女将さんの後に続いて玄関に行く。
「お待たせしました」
宿の女将がにこやかに応対する。
「ここの人ですか、お届け物です」
「おう、大至急ここに手紙を届けてくれって言われてすっ飛ばしてきたぜ」
「まあまあ、それはご苦労様です。で、どなた宛てでしょう?」
男の方がごそごそと抱えている鞄から手紙を出す。
「白妙と黒妙宛てだ。何であの二人がここに居るんだか知らないが、居るかい?」
「やっぱりチャトーラだ、それとチャミ」
女将さんの後から付いて来たロレッタが顔を出す。
「ロレッタ、何でお前がここにいるんだよ」
「チャトーラとチャトーミだ」
ミケラがロレッタの後ろから飛び出してきた。
気になってミケラもロレッタの後ろに付いて来たようだ。
「姫様だ」
「チャトーミ」
ミケラとチャトーミがヒシッと抱き合う。
「姫様がいるって言うことは旅行先はここか?」
「そうだよ」
「あなた達こそ、こんな所まで何しに来たのよ」
「手紙を届けに来たんだよ、なんか偉そうな婆さんに頼まれて」
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