6話「お妃様の陰謀 14」
しばらく広間で寛いだ後、部屋の準備が出来たと呼びに来たのでそれぞれ部屋に戻る。
部屋に戻ると、床に寝具が引かれていた。
「これで寝るの?」
「みたいね」
ふかっとしたマットの上に掛けられた薄い布団をロレッタはめくる。
夏には少し早いが暖かい季節なので寝るには十分だ。
もうミケラとサクラーノは眠くてうとうとし始めていた。
「それじゃ寝ようか」
サクラーノとミケラを寝かしつけてから魔力灯の明かりを絞ってタマンサとロレッタも寝具に潜り込む。
草で出来た床の香りが鼻をくすぐる。
「なんか落ち着く香りだな」
ロレッタはそんな事を考えているうちに眠りに落ちた。
ケットシー達の朝は早い。
娯楽が少ない世界なので日が暮れると家族との団らんの後は寝るしかないからだ。
寝るのが早ければ必然的に起きるのも早くなる。
「はいはい、ミケラもサクラーノも起きなさい」
ロレッタがミケラとサクラーノを起こす。
タマンサは既に着替えて顔を洗いに行っていた。
「おはようございます、朝食のご用意が出来ましたので広間においで下さい」
そうこうしている内に、仲居が呼びにくる。
広間に向かう一同。
広間のテーブルの上には水の張った大きな桶が置いてあり、桶の中には細いパスタが入っている。
「中のパスタを掬ってこのつけ汁でお召し上がり下さい」
人数分の大きめのお椀の中に黒いつけ汁と、細かく刻んだ香菜が入っていた。
「中に入っているのはナガネに似ているけど、ナガネにしては細いわね」
ナガネは長ネギに似た野菜で、王都で一般的に使われている。
が細いナガネは王都ではほとんど流通していないので馴染みが無かったのだ。
「あら、このつけ汁、夕べのショウスに味が似ているわ」
「これは魚で出汁を取ってショウスで味付けしたモノですよ」
仲居が説明してくれた。
ショウスで作られたつけ汁は魚の出汁が利いていて、糸のように細いパスタとも相性抜群であった。
「美味しいわね、このパスタのお土産は有る?」
タマンサが仲居に利く。
「ゴホン」
ロレッタがわざとらしい咳をする。
財布の紐を握っているのはロレッタなのだ。
生活に困っているわけでは無いが、裕福でも無く、あまり無駄使いは出来ない。
「はいございます、乾燥させてあるので日持ちも致しますので是非お帰りの際は売店でお願い致します」
ロレッタの咳払いなど気にもせず、仲居はニコニコ笑いながらお土産に奨める。
「母さん、お家でもこれ食べたいな・・・ミケラもサクラーノも食べたいよね」
「うん食べたい」
「食べたい」
下の妹二人を巻き込む母親に、ちょっとイラッとするロレッタ。
「お姉ちゃん買って」
三人口を揃えておねだりをしてくる。
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