6話「お妃様の陰謀 08」
「人数が多いので、子供達の荷物だけお願いします。大人は自分たちで運びますから」
「いいんですか?あっ、でもお母さんの分は運びますね。それでは荷物持てないでしょ」
タマンサの両手はミケラとサクラーノが握っていて塞がっているのだ。
「二人ともお母さん大好きなのね、離しちゃダメよ」
「うん」
二人の返事を聞いて笑う仲居達。
「すみません」
「気にしないで、それではお部屋にご案内します」
女将が先頭に立って歩く。
女将に続いて玄関に入ると小部屋程度の広間の先が高くなっていた。
「ここで靴を脱いでいただきます」
突然言われて戸惑う一同。
「申し訳ありません、このあたりは湿気がひどくて。湿気から守るために一段高くなっているんですよ。この先は素足でも大丈夫なようになっていますから」
段の上には確かに敷物が一面に敷かれていて素足でも問題なさそうだった。
「ここで立っていても始まらないわよ、そう言う決まりなら従った方がいいわ。さっ、靴を脱ぎましょ」
タマンサの一言に皆は動き始めた。
しかし、タマンサは動けない。
「ミケラ、サクラーノ、お願いだからお母さんの手を離して」
ミケラとサクラーノに手を握られてどうにも出来なくなっていたのだ。
「いやっ」
「お母さんの手は離さないもん」
二人は離さないぞとばかりにタマンサの手にしがみつく。
「母さん、わたしが脱がすから座って」
ロレッタに言われてタマンサは腰掛ける。
「ほら、ミケラもサクラーノも座りなさい。靴を脱がしてあげるから」
二人とも素直にタマンサの横に座った。
「わたしも手伝いますよ」
白妙の申し出に、
「じゃあ、ミケラとサクラーノの靴をお願い。わたしは母さんの靴を脱がすから」
ミケラとサクラーノの靴は子供用の靴で、脱がすのは簡単だったが、タマンサの靴は編み上げのヒールが少し高い靴で脱がすのはちょっと手間だったのだ。
「もう40近くなのに、こんな靴履く事ないでしょ」
「あらやだ、女は幾つになってもおしゃれに気を遣わないと。それに年を取ったら尚更よ、おしゃれをやめたら心から年を取ってしまうわ」
「そんなもんなの、わたしはよく判んないな」
「あなたがおしゃれに興味なさ過ぎるのよ、17歳なのよ。おしゃれにもっと興味を持ちなさいよ」
「はい終わった、行こう」
ロレッタはタマンサのお小言を完璧にスルーする。
「こちらがお部屋になります」
お妃様は六人部屋二つに四人部屋一つを予約しておいてくれていた。
部屋割りはタマンサ、ロレッタ、ミケラ、サクラーノ。
白妙、黒妙、マオ、モモエル、キティー。
トランスロットは四人部屋に一人となった。
ミミ達三人は、
「あたい達は小さいから好きな時に好きな部屋にいる」
と言って部屋割りには加わらなかったのだ。
三人のベッドはざるにタオルを引いただけのモノだったので持ち運びにも手間がいらないので「まっいいか」という事になった。
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