6話「お妃様の陰謀 02」
「姉ちゃん、お妃様はいつ仕掛けてくると思う」
白妙と黒妙もお昼の後、木陰で休んでいた。
「仕掛けてくるなら宿に着いてからでしょうね」
「でも、不意を突いて移動中って無い?お妃様ならやりかねないと思うけど」
「それは無いわ、ミケラ様も一緒だもの。下手な事して馬車の馬が暴れでもしたら大変よ。それにタマンサの療養のための旅行でもあるから、病み上がりの身体に響く事はしないと思う」
白妙もお妃様がこの旅行中に何か仕掛けてくるだろうという予想は付けていた。
しかし、ミケラとタマンサが一緒なのでそんな無茶な事は仕掛けてこないだろうという予想も付けていた。
その予想が甘かったと後で思い知らされる事になるのだが。
タマンサ一家はお妃様の手配した場所に乗って温泉旅館に向かっている最中なのだ。
昨晩は途中の町で一泊し、今朝は宿を早く出てきて、今は昼食の後の休憩をしていた。
「モモエル様、大丈夫ですか?」
モモエル達も日陰で休んでいた。
「はにゃ・・・・・・」
モモエルは意識朦朧の状態だった。
「無理するからですよ」
昨日からずっとこんな調子なのだ。
お妃様に強制的に休む事を命令された後、モモエルは働くに働いた。
開発中の新機体を旅行に出る前に仕上げたかったのだ。
その為に、モモエルがキティーの回復魔法を受ける回数が増え、サビエラに「これ以上はモモエル様の回復禁止」を言い渡されたのだが。
「ねぇ、回復してくれないの?」
泣きそうな顔でキティーに迫るモモエル。
「ダメです、サビエラさんに回復してはダメって言われてます。わたしが怒られちゃいます。それにわたしもモモエル様はもう寝てきちんと休んだ方がいいと思うし」
モモエルはキティーの肩をがっしっと掴み、
「サビエラよりわたしの方が偉いのよ、わたしはここの所長なのよ」
血走った目でキティーを睨む。
「ダメと言ったらダメです、ドクターストップです。寝て下さい」
キティーは診療室のベッドを指さした。
「ううっ、キティーのイジワル、ケチ」
諦めてキティーの肩を離し、半泣きでモモエルはおとなしくベッドに入った。
「シクシクシク」
毛布を頭かかぶり、毛布の隙間からずぶ濡れになった子犬のような目でキティーをじっと見つめる。
その目でじ~っと見られ続けて、
「もう判りました、今回だけですよ。これで終わりですよ」
キティーの方が折れてしまう。
これに味を占めたモモエルを、キティーはこのあと何度も回復することになった。
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