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五話「ミケラの日 52」

「では、闇を抜くぞ」

 マオはタマンサの胸に手を置いた。

「アン」

「変な声を出すではない」

「いやあ、お約束かなと思って」

 タマンサはペロッと舌を出す。

「何のお約束じゃ、何の!」

「マオとやら、その程度でいちいち怒っていたらタマンサとは付き合えませんよ。常に寛大な心を持ち続けなさい」

「そうよ、タマンサは天然だからそのつもりで付き合わないとダメ。流しなさい、でないとタマンサに振り回されるわよ」

 お妃様とモモエルが口を揃えてタマンサとの付き合い方を伝授する。

「何よ、ひどいわ二人とも」

 タマンサはプンプンと怒る。

「やはりミケラの育ての親なんだ」

 とマオは理解した。

 ミケラも周囲と感覚がずれている所があるが、間違いなくタマンサの影響だ。

「兎に角、お主の中の闇を抜くのが先じゃ。でないと話が進まぬ」

 マオは再度、タマンサの胸に手を当てて力を込める。

「あうっ」

 タマンサが苦しげな表情をし、うめき声を上げる。

「しばしの辛抱じゃ」

 マオの額にも汗がにじみ始めていた。

「うぬぬぬぬ」

 更に力を込めるマオ。

 唐突にその表情が緩む。

「終わったぞ、お主の中の闇は全て吸い取った」

 それだけ言うと、マオは自分の仕事は終わったとばかりに部屋を出て行こうとする。

「マオ、もうしばらくここに居てもらえる。あなたに伝える事もあるから」

「予に?」

 何だろうと思いマオは出て行くのを止め、部屋の隅でおとなしく待つ事にした。

「タマンサ、身体の具合はどう?」

 お妃様がタマンサの顔をのぞき込む。

「う~ん、少し身体が軽くなった気がするわ」

 タマンサは首を回し、腕をぐるぐる回す。

「良かった、あなたの事は本当に心配していたのよ。あなたからミケラを取り上げて、そのあなたが倒れたと聞いた時には、わたしも倒れそうになったのよ」

 お妃様もミケラを産んだ後、5年間療養する羽目になりまだ完全に回復しているわけではなかったのだ。

 やっと街に出て歩けるようになったのもつい最近の事。

「これでこのまま良くなるのかしら?」

 お妃様はマオに聞く。

「患いの元は予が吸い取った、後は養生次第じゃろうな」

「ふ~~ん」

 お妃様は少し考え込んでから、

「タマンサ、あなた旅行に行かない?」

 唐突な話にタマンサは頭を傾げた。

「体力回復のための旅行よ、良い療養場所を知っているの。是非そこへ行ってらっしゃいな。勿論あなた一人だけじゃないわ、家族で、そうミケラも一緒に。それならいいでしょ」

 お妃様が嬉しそうな顔をしてやたらと奨めてきた。

「療養場所って、どんな感じなんですか?」

 ミケラと一緒という言葉に動かされてタマンサは療養場所について聞く。

「あら興味を持った、療養って言うより温泉旅館なんだけどね。それがね、そこの温泉が凄くいいのよ」

 お妃様が町のおばちゃんと化す。


(Copyright2022-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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