五話「ミケラの日 50」
「うふふふ、わたしの一番の薬はミケラとサクラーノよ、二人同時に抱きしめた時の幸せがわたしの最大の癒やしよ」
タマンサが手を組み、高揚した顔で点を見上げた。
「ミケラとサクラーノは本当におぬしの身体を治しておるぞ」
「へっ?」
タマンサが意外そうな顔でマオの顔を見た。
「治しているのはミケラの力じゃが、ミケラだけでは力が弱い。何故かサクラーノにはミケラの力を強くする力があるのじゃ。二人が揃って二人の心が揃うと、二人の間が虹色の光でつながるのじゃが、その光がおぬしの闇を小さくしているのを予は見たからのう」
「ホント?」
タマンサがマオに聞き返す。
「本当じゃ、予にはおぬし達に見えぬ力も見えるからのう」
マオが太鼓判を押す。
「やった、やっぱりあの二人はわたしのの最高の薬で、わたしの最高の娘達よ」
タマンサは自慢するようにお妃様の方を見た。
だが、お妃様は始めて聞く話に戸惑い顔をしてマオの方を見ていた。
「マオの話はたぶん本当ですわ」
タマーリンが説明に入った。
「ミケラ様には他人を癒やす力が確かにあります、それもその方が心の奥底で望む癒やしを具現化する力ですわ。通常の回復魔法では不可能な事すら出来てしまうとて尊くて貴重な力です」
「な、なんですって」
お妃様が驚きの声を上げた。
驚くのも無理はない、タマーリンの話が本当ならおとぎ話に出てくるする聖女の力ではないか。
「大叔母様、お静かに。話はこれからです」
タマーリンは周りを見回す。
「ミケラ様に関するこの話は、皆様、他言無用でお願いしますわ。理由は今からご説明致します」
タマーリンは皆を見回す。
「ミケラ様の力はとても貴重で尊いですが力は弱いです。サクラーノの力で強化しても、駆け出しの回復術士にすら勝てない程度の力しか出せないのが現状です。ミケラ様もサクラーノも心の底からお母さんを、タマンサを治したいと思っていますが、症状を軽くするのが今は精一杯です」
タマーリンの表情が少し暗くなる。
他人は助けられても自分の望みは叶えられないミケラ達を思うと、心が痛むのだ。
「この事をミケラ様達が知ったら何が何でも自分たちの力でタマンサを治そうとするでしょうね」
「それはダメです、魔法を無理に使おうとすれば制御できなくなって暴走するわ。まして、聖女の力なんて未知の力が暴走したら何が起きるか判らないです」
キティーが叫ぶ。
「キティーの言う通りよ、使い方の判らない力を無理に、それもまだ小さいミケラ様が使うのはわたくしも賛成できません」
タマーリンはきっぱり言い切った。
そこからタマーリンの話をモモエルが引き継ぐ。
「そこでわたしとタマーリンと相談して、ミケラ様がもっと大きくなってどうするか決められるようになるまで、この事は内緒にしようと決めたんです」
「どうか皆さん、ご協力お願いします」
タマーリンとモモエルが頭を下げた。
「そうねミケラもサクラーノもこうと決めたら頑として聞かない所があるし、黙っておくのが一番かも」
ロレッタも賛成した。
「わたしは・・・」
黒妙は困ったような顔をしたが、お妃様に睨まれて、
「はい、言いません・・・言ったらお妃様とタマーリン様とモモエル様を敵に回しそうだし。そこまで、わたしも命知らずじゃないから」
黒妙は何度も首を振る。
「白妙、ご苦労様でした。あなたには聞かなくてもいいわね」
白妙は静かに頷く。
さっき白妙がお城に向かって出した合図は、ミケラが寝たら合図するようにお妃様に言われていたからだ。
「それにしても、ミケラにそんな力があったなんて驚きだわ・・・でも」
お妃様は少し考えてから、
「わたし、ミケラを産む前にお医者さんからわたしかミケラかどちらかしか助けられないって言われたのよね。勿論お腹の子供を助けてって言ったわよ、もう十分生きたし、お腹の子に次を託すつもりだったの。でもギリギリでわたしの命も助かったのよね、お医者さんは奇跡だって驚いていたけど。たぶん、ミケラがわたしの命をつなぎ止めてくれたんだと思う」
お妃様は感慨深げに話した。
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