五話「ミケラの日 44」
「そうなんだ」
ロレッタはちらっと白妙の方を見て「あっ、これは無理」と諦めた。
噂話は好きだが、人が嫌がるのに無理に聞き出さない、というのがロレッタのモットーなのだ。
小さい頃タマンサに、
「あなたは本当におしゃべりが好きね、でもね人が嫌がっているのに無理に話をしたり、人をこまらせるようなことは言ってはいけないわよ。そう言うのは、巡り巡って自分に返ってくるモノなのよ」
と怒られた事があるのだ。
それ以来、ロレッタは嫌がる人に無理に話しかけたり、人の悪口は言わないように心がけていた。
恋バナ関係の話はタマーリンやモモエルにも聞いた事がない。
タマーリンは近寄るなオーラを全身から発しているので、男どころか女性もあまり近寄らない。
モモエルは性格も良く美人でスタイルもそこそこなのでモテそうだが、研究馬鹿なのでミケラ関係以外で研究所の外に出る事は滅多にない上に、研究員のほとんどがモモエルの事を「仕事は出来るけど手のかかる子供」と見なしているので浮いた話もないのだった。
「サクラーノの話は良いのか?」
マオに言われて、ロレッタは「あっ」と言う顔をする。
「いけない、忘れてた」
薄情な姉であった。
「で、どうしてあんなになったの?」
ロレッタはマオ達の話を聞く。
マオ達の話を要約すると、マオと白妙達の合わせ技の飛行が子供達の評判が良く、結局、午後は何度も飛ぶ事になったそうだ。
マオも調子に乗ってサクラーノに何度も引っ張って貰い、最後にサクラーノが力尽きてコテッと倒れたので慌てて戻ってきたと言う事だった。
「はいはい、判りました。それだけサクラーノも楽しかったのね」
ロレッタが意外とあっさりしていたので、驚くマオ達。
「それで良いのか?」
「もう少し怒られるかと思っていました」
「うんうん」
「サクラーノって普段から力セーブしているのよ、無闇に使うと周りに迷惑かけて怒られるから。だから自分の力を目一杯使っても怒られないと言うのは、嬉しくてしかたないよ。だから思いっきり遊べたと思うの、サクラーノと遊んでくれてありがとう」
ロレッタはマオ達にお礼を言う。
「さてと、サクラーノが起き出してくる前に夕食の支度しないと。あなた達も手伝ってね」
「勿論です」
「喜んで」
「予に任せるのじゃ」
ロレッタに引き連れられて、マオ達は台所に向かう。
白妙と黒妙は料理は得意ではなかったが、刃物扱いには慣れていたので二人で野菜の皮むき。
マオは家では武茶士の食事の手伝いをしていたので、ロレッタの手伝いに回る。
「ありがとう、助かったわ」
手伝って貰い、夕食の準備が思っていたより早く終わったのでロレッタはほっとする。
そこへサクラーノとミケラが食堂にやって来た。
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