五話「ミケラの日 39」
「わたしの作ったモノが市民生活に?・・・初めて聞くんですけど」
「あなたが研究に打ち込めるように余計な事は言わないようにサビエラに口止めされていたのと、街の人の役に立つと聞いたらあなたが今以上に頑張ってしまうでしょ?これ以上頑張ったら倒れてしまいますわ」
タマーリンは一旦言葉を区切ると、
「あなた、褒められると調子に乗る馬鹿ですから」
ズバリ図星を付く。
「だ、だって、街の皆さんに喜んでもらえるのは嬉しいのよ。そのために頑張るのはいけない事?」
最初の頃はただ、魔道具の研究開発が出来るだけで嬉しかった。
しかし、ミケラの様子を見に行って支援をする内に街の住民との交流も増え、街に何か貢献したいと思うようになったのだ。
その思いが、自分の知らないところでかなっていたのだからこんなに嬉しい事はない。
「程度というモノがあります!」
入り口でサビエラが叫んだ。
「サ、サビエラ、どうしてここに?」
サビエラの姿を見た瞬間、モモエルが挙動不審になる。
「だ、大丈夫、今日は予定をきちんとこなしたわ」
モモエルは魔法具研究所の所長だが、自分が研究に没頭したいために細かい事はほとんどサビエラに丸投げしてしまっているのだ。
なのでスケジュールをきちんと守らないと怒られる。
「安心して下さい、別に怒ったりしませんから」
「ほ、本当に?」
「本当です」
モモエルの顔がほっとして和む。
「もっとも、一つ目ちゃん2号の実験報告書は今日中に出して下さいね」
それを聞いた瞬間、モモエルの表情が再び挙動不審になる。
「む、無理よ・・・今日はここで夕食を食べて帰るの、ミケラ様とご夕食を一緒にしたいの、それを楽しみに頑張ってきたんだから、ねっ、ねっ、ねっ」
最後の方は泣きそうな顔になる。
「判りました、報告書は明日のお昼で結構です」
ここ数日、モモエルが頑張っていたのは本当だ。
それもこの日にここへ来るためだというのは、所員の誰もが知っていた。
サビエラとしてはモモエルにあまり無理をして欲しくないのだが、目標が出来るとそれに一直線に頑張れるのもモモエルの良いところなので、それを邪魔するつもりもなかった。
そこへ、寝ていたミケラ達が目を覚ましてやって来た。
「やっぱりミケラといると、サクラーノの目を覚ますのが早いわね」
サクラーノだけならば午後いっぱいほぼ寝て過ごし、目を覚ますのは夕方頃になってからだ。
「ミケラといると楽しいから」
「わたしもサクラーノといると楽しいから」
サクラーノとミケラは元気いっぱいの笑顔を見せる。
「予も、遊びすぎて疲れたのが戻っておるぞ」
マオは両腕をぐるぐる回す。
「じゃあ、遊びに行こう」
サクラーノがそう言うなり、ミケラとマオの腕を掴んで走り出した。
「いってきま~~す」
「いってくるのじゃ」
三人は再び遊びに飛び出していった。
後書きです。
新キャラ登場です。
今回は顔見せ程度ですが、次の次に本格的に出番が来ます。
本当はここで出す予定じゃなかったんですよね。
食事シーン書いていて「あれっ、誰か足りない…まっいいか」と投稿してしまってから、
「あっ、トランスロット回収するの忘れてた」と思い出しました。
本当はお昼前に回収するつもりだったのが、完璧に忘れてました。
作者からも忘れられるとランスロットに愛の手を\(^o^)/
ではまた来週 サービス サービス