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五話「ミケラの日 38」

「だから止まれって言ってるだろ、このくそぼけ爺」

 サンチョが俊敏な動きでドンに追いつくと、兜の上からドンの頭をグワッシと掴んで無理矢理止めた。

「わし、お前の主人なんだけど・・・くそぼけ爺ひどくない?」

「はいはい、いいから行きますよ」

 サンチョはまるで聞く耳を待たない。

「それじゃお嬢さん、ありがとう」

 サンチョはロレッタにウィンクをするとドンを引っ立てるようにしてお城の方へと向かった。

「はぁ」

 見送ってからロレッタは溜め息をついた。

 サンチョのようなタイプの男は実は苦手なのだ、お城にも似たようなタイプの男がいてロレッタに言い寄ってくるので困っているのだ。

「トランスロット、家に入ってお昼にしなさい」

「どなたでした?」

 白妙がお茶を啜りながら聞いてくる。

「トランスロットを家まで送ってきてくれたドワーフさんとキザ男」

 キザ男の方を本当に嫌そうな口ぶりで言う。

 それからロレッタはトランスロットを椅子に座らせて、お昼を食べさせた。

 トランスロットの食事をしている横で、白妙達とお茶の続きをする。

「ねえねえ、キザ男って言うとあれも困るよね」

 黒妙が声を潜めて切り出す。

「あれは本当に困る、わたし、言い寄られて困ってしまいます」

 白妙も困っているようだ。

「わたしも言い寄られていて困るよ、ミケラに相談するわけにはいかないし、かといって王妃様に相談したら大事になるし」

「わたしも、わたしも言い寄られた」

 黒妙のその一言に、ロレッタと白妙の中で噂の男の評価が最低ラインに奈落の穴を開ける程に落ちたのだった。





「ま、負けました」

 モモエルはタマーリンに白旗を揚げた。

 延々と術式バトルを繰り広げていた二人だが、ようやく決着が付いたようだ。

「あなたも頑張りましたわよ、わたくしと術式でここまで戦えるのはあなたくらいのモノですわ」

 タマーリンが周りを見渡す。

 二人の周りには術式の書かれた紙が散乱していた。

「これ貰っていい?研究員に見せたいの」

「いいですわよ、わたくしもそのつもりでしたから。魔法具研究所の技術力が上がれば王国の発展にもなりますから。モモエル、あなたが所長になって本当に良かったと思ってますのよ」

 タマーリンは手放しでモモエルを褒めた。

「や、やめてちょうだい。この間だって魔法投影機を勝手に持ち出して王様に怒られたばかりなのに」

 モモエルはタマーリンに褒められたのに、ムキになってそれを否定しようとする。

「ああ、あの投影機、これから街のお祭りに貸し出すという話が出てますのよ」

「えっ、本当に?」

 意外な話にモモエルは驚きの声を上げる。

「ええ、街の主立った方と王宮で何度か打ち合わせうぃしたそうですから。そのうちにあなたの所にお話も行くと思いますわ」

 その話を聞いてモモエルが少し涙ぐむ。

 国の予算を使っている以上、どうしても研究は軍事関係に傾きがちだ。

 その陰であれこれやりくりして市民生活に役に立つ研究をしてきたのだが、軍事用に研究開発してきたモノが市民の役に立つと言われてつい涙が出てしまったのだ。

「うふふふ、あなたたちの作ったモノで市民生活に役に立ちそうなモノは、ドワーフの工房に持って行って市民用に作り替えていますのよ。おかげで街の生活が少しずつ良くなっていますの。これもあなたの頑張りのおかげですわ」

 これもモモエルが初めて聞く話だ。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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