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2話「城下の黒い影 その3」

 ミケラが虎次郎の手を引いて歩き、その後を妖精達が付いていく。

 ミケラに手を引かれながら、虎次郎は着物の袖に隠した機械のスイッチを押す。

 これはミケラが城を出る時、必ず押すようにとお妃様に厳しく言われて渡されたものだった。

 用途は判らない。

 そのままお城の門まで行くと、

「姫様、お出かけですか」

「行ってらっしゃい」

 門番達はニコニコ笑いながら手を振ってミケラ達を見送る。

「待ってたぜ姫様、そろそろ出てくる頃だと思ってたぜ」

「兄ちゃんの勘はいつもながら冴えてるね」

 城門を出るとチャトーラとチャトーミの兄妹が待ち構えていた。

「へへへ、兄ちゃんを尊敬したか妹よ」

 チャトーラは胸を張る。

 そのチャトーラの手に小さな機械が握られていた。

 お妃様から密かに渡されたもので、その機械が振動するとミケラがお城から出てくる合図になっていたのだ。

 つまり、虎次郎の押したボタンはチャトーラの持っている機械を振動させ、その合図でチャトーラ達は待ち伏せていただけなのだ。

 それを知らないチャトーミは、

「ひっめさまぁ」

 ミケラに抱きつくと頭を撫でる。

「きゃっ、きゃっ」

 ミケラが頭を撫でられてきゃっきゃっと喜ぶ。

「で、今日の散歩のネタはなんだい?」

 チャトーラに聞かれて妖精達が説明した。

「へぇ、黒づくめの怪しい奴ねぇ」

「そうなんだ、手下の話じゃ街の中をこそこそ動いている上に、逃げ足が速いからなかなか見つけられないって話だ」

「そうじゃん、うちの手下はこそこそするのは得意じゃん。そいつらが見つけられないって事はかなり隠れるのも上手じゃん」

 妖精達の手下は街のチンピラである、大手を振って街中を歩くと警備兵達に目をつけられるので、目立たないように生活をしているのだった。

 チンピラと言っても定職に就かず、街の中で何でも屋的なことをして、時には腕っ節で解決したりもしていたので、あまり目立たなければ見逃してやろう的な存在なのだ。

「へぇ、そいつは面白そうだな」

「そいつを捕まえるのね、兄ちゃん頑張ろうね」

 兄妹は相変わらずのハイテンションで笑う。

「で、どこから探すよ?」

「う~~ん、商店街の裏から行ってみようか」

 城下町にはお城に続く道沿いに商店が並び、街の商店街となっていた。

「姫様、こんにちは」

「姫様、寄っておいでよ」

「わーい姫様だ」

 ミケラが歩くと商店街のあちこちから声を掛けられた。

 その度にミケラは大きく手を振って応える。

「相変わらずすげぇ人気だよな、姫様は」

 と言いつつニタつくチャトーラ。

「兄ちゃん、ニタついてるよ」

「そお言うお前だってさっきから嬉しそうに笑ってるじゃねえか」

「姫様に人気があるのが嬉しいから仕方ないじゃない。兄ちゃんだってそうでしょ」

「ま、まあな」

 チャトーラ達がニヤニヤしていると、街のおばちゃんが声を掛けてきた。

「あんたたち、聞いたかい?夜中に真っ黒根影が飛び回っているんだってよ。ミケラ様を夜に外へ出しちゃダメだよ」

「ホント怖いわね、警備隊は何しているのかしら?」

「聞いた話じゃ、神出鬼没で警備隊もお手上げみたいよ」

「いやぁ、怖いわ。夜出て歩けないわね」

 話にかなり尾ひれが付いていた。

「大丈夫、姫様は夜出て歩く悪い子じゃないもんね」

「うん、夜はちゃんとお部屋にいるよ」

 夜に出歩くとお妃様に怒られるからなのだが、それは言わないミケラだった。

「それじゃお俺たち行くから」

「気をつけて行っておいで」

「ミケラ様もお気を付けて」

 おばさん達に手を振りながら、一行は先へとと進む。

 その一行をこっそりと尾行する影があった。

 その影はつかず離れず、そして気が付かれないよう慎重に一行の後を追う。

「こっから裏道に入ろう」

 ミミが先に立って一行を裏道へと誘う。

 後を尾けて来た影はチャンスとばかりに距離を詰め、手にした木刀を振り上げた。

「やぁぁぁぁ!」

 力一杯声を張り上げて虎次郎に木刀を振り下ろすが、虎次郎は難なくそれを避けると殴りかかってきた相手の襟首を掴んで持ち上げる。


著作権表記追加                       (Copyright2021-© 入沙界 南兎)


2023/09/30 一部修正


                        (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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