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五話「ミケラの日 34」

「お邪魔します」

 モモエルは慣れた感じで家の中に入る。

「ロレッタ、部屋の隅借りるわね」

 ロレッタの返事も待たずにモモエルは、部屋の隅で持ってきた梱包の紐を解き始める。

 梱包の包みは広げるとシートとなり、モモエルは広げたシートに座ると、

「キティー、ここにお座りなさい」

 とキティーもシートに座るようにシートを叩いた。

「は、はい」

 キティーは諦めて素直に従う。

 下手にごねてもモモエルに押し切られるのは判っていたから。

「モモエル様があそこまで押しが強いとは思わなかった」

 空き地でモモエルに押し負けたときのことを思い出す。

「それではお昼にしましょう」

 梱包の中身は布に包まれたモノが二つ、瓶が二つ、不格好な水筒らしきモノが一つにカップが二つだった。

「ちょっと待っててね」

 モモエルが不格好な水筒に付いているスイッチを押して水筒を立てて置く。

「これがキティーの分」

 布に包まれたモノと瓶を一つずつキティーに手渡される。

 布を解くと中から箱に詰められたサンドイッチが出てきた。

「ふんふん、保存の魔法はきちんと効いたみたいね」

 モモエルはハムを挟んだサンドイッチを取り出して匂いを嗅ぐ。

「こっちも大丈夫」

 今度は瓶の蓋を開け、中に指を突っ込んでからその指を舐めた。

 瓶の中身は魚と野菜を刻んだモノを砂糖と酢で味付けしたモノだった。

 ハーブや香辛料の香りもする。

「こっちも準備できたみたい」

 不格好な水筒の蓋を開けると二つあるコップに中身を注ぐ。

 キティーの鼻を暖かいオニオンスープの香りがくすぐった。

「モモエル様、これはいったい・・・」

「さっき言ったでしょ、戦地に物資を届けるための実験だって。これは食糧支援の実験よ。ただ、保存の魔法で保存できるのが今のところ三日だけというのが悩みの種なのよね」

 モモエルはサンドイッチを頬張りながら愚痴をこぼす。

「面白そうなお話ですわね」

 タマーリンが話を聞いてきたのか、側に寄ってきた。

「術式を教えてもらえません事?」

 モモエルは鞄から紙と鉛筆を出すともの凄い勢いで術式を書き始めた。

 キティーがちらっと見たが、複雑すぎてまるで判らない。

 回復魔法の方が専門で、術式の講義は入門程度にしか受けていないので仕方ないと言えば仕方ないのだが。

「出来たわよ」

 書き上がった術式をタマーリンに手渡す。

 手渡された術式をタマーリンは真剣な目で見る。

 突然、鉛筆を手にしてモモエルに渡された術式に書き込み始めた。

「ここをこうすれば魔法の効率が上がりますわよ」

 モモエルは指摘された部分を見て、

「そうか、その手があったわね」

 タマーリンの書き換えた部分をじっと見つめていたモモエルは、タマーリンに対抗するように術式の書き換えを始める。

「こんな感じでどう?」

「あらあら、そう来ましたのね。いいですわ、その挑戦受けますわよ」

 笑いながらタマーリンの目は燃え上がる。

 その横でキティーは溜め息をついた。

 複雑な術式をいとも簡単に書き上げたモモエルも凄いが、その術式を目の前で改善して見せたタマーリンも凄い。

「わたしとはレベルが違いすぎる」

 兆凄い二人の兆凄い才能を目の前で見せられ、キティーは凹んでしまったのだ。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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