五話「ミケラの日 31」
キ~ン コ~ン カ~ン コ~ン
時計塔からお昼を知らせる鐘の音が響き、その後を追うように街のあちこちで鐘が響き渡った。
「お昼だ」
「お昼だね」
「じゃ、帰ろうぜ」
子供達はお昼を食べるためにそれぞれ散っていく。
「じゃ、私たちも帰ろう」
ミケラが言う。
「白妙も黒妙も来るよね?」
サクラーノが二人が来るのは当たり前のように聞いた。
「いつもありがとう」
「ロレッタの作る料理は美味しいから、楽しみにしてるんだ」
白妙も黒妙もミケラの護衛として、本当は外で待機しているのが本当なのだが、何度も護衛をしている内にミケラ達と一緒に食事をするのが当たり前になっていた。
「みんなで食べた方が美味しいし」
ミケラとサクラーノとマオ、そして白妙と黒妙もミケラの家を目指して歩き始めた。
何故か、タマーリン、モモエル、キティーもその後に続く。
「ね、姉ちゃん、タマーリン様達も後ろから来るんだけど」
「しーっ、目を合わしちゃダメよ。知らないふり、知らないふり」
白妙と黒妙はタマーリン達に気がついていないふりを決め込んだ。
やがてミケラ達は家に着く。
「ただいま~~~!」
ミケラとサクラーノが元気な声で家の中に飛び込む。
「お邪魔します」
白妙達もその後に続く。
「二人とも手を洗ってテーブルに着きなさい、直ぐにお昼にするから。白妙も黒妙も手を先に洗って・・・・・・あら、タマーリン様、モモエル様」
ロレッタは白妙達の後にタマーリン達がいるのに気がついた。
「お邪魔してもよろしいかしら?」
タマーリンが入り口のところで聞く。
「はい、どうぞ」
「ありがとう、それじゃお邪魔するわね」
家の中に入ったのはタマーリンだけで、モモエル達は外に残った。
「モモエル様達も中へどうぞ」
ロレッタが声をかけると、
「ありがとうロレッタ、でもわたし達はまだやる事があるから。それが済んだらお邪魔するわね」
モモエルは笑いながら断る。
「わたくしの方もお構いなく、お昼は用意してきましたわ」
タマーリンが手提げ鞄の中からロレッタもよく買いに行くパン屋の包みを出す。
「あっ、そこのパン屋、わたしもよく買いに行きます。タマーリン様もよく行くんですか?」
「一人暮らしですし、わたくし料理の方はあまり得意ではなくて。いつもは届けて貰っているんですのよ、だからお店にはあまり行きませんの。今日はここに来るつもりでしたので、お店に寄って買ってきましたのよ」
早い話、始めからミケラの家でお昼にするつもりだったのだ。
「悪いですけど、お茶を頂けると助かります」
既にテーブルは席が埋まっていたので、タマーリンは余っている椅子をテーブルにするのか、椅子の上にパンの包みを置いて床に腰を落としていた。
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