五話「ミケラの日 27」
残り5歩、サクラーノの小さい身体では後5歩でタッチするのはかなり難しい。
「次も鬼になるの嫌だからね」
マオに抱えられたミケラが文句を言う。
タッチできなければ次も鬼となる決まりなのだ。
「大丈夫、ここからが本番だから」
サクラーノはミケラの方を向いてニコッと笑った。
その笑顔を見た瞬間、ミケラは悪い予感がしてマオに力一杯しがみついた。
「いっくぞぉぉ」
かけ声と同時にサクラーノの身体がミサイルのように飛び出す。
「ひゃぁぁぁ」
「あぎゃぁぁ」
ミケラとマオが悲鳴を上げた。
そのサクラーノの動きを追うモノ達がいた、それは白妙・黒妙姉妹。
「やば、出遅れた」
反応が遅れて焦る黒妙、それでも走る。
「止めてみせる」
白妙は瞬時に反応してサクラーノの進行方向に疾走した。
「あら、これはダメね」
何かに気づき、タマーリンは魔法の準備に入る。
「くっ」
結局、白妙は間に合わず目の前をサクラーノが走り抜けて行ってしまう。
「うわっ」
弾丸のような勢いでサクラーノが自分の方に突っ込んでくるのを見て、ペルタも悲鳴を上げた。
「タッチ」
サクラーノがペルタにの前で急停止してペルタにタッチした。
が唐突に、サクラーノの姿が消えてしまう。
「あぎゃ、無理じゃ」
サクラーノが止まれても、サクラーノに引っ張られてきたマオは止まる事が出来なかったのである。
しかも、サクラーノの手を握ったままだったので、そのままサクラーノを引っ張る事になって仕舞ったのだ。
それでサクラーノの姿がペルタの目の前から消えたのだ。
マオは地面に激突しないように踏ん張る。
「グヌヌヌゥゥ」
なんとか地面に激突するのは防いだが、腕に抱いてるミケラとサクラーノの手を離さないようにするのが精一杯で、飛行をコントロールするまでの余裕がなかった。
このままでは家の壁に激突してしまう。
「ウィンド」
タマーリンが魔法を唱える。
マオの進行方向から吹き上げる風が吹き、ミケラとサクラーノを抱えたマオの身体を上空に運んだ。
風によって速度も次第に落ち、家の上空でマオは体制を直した。
「ふう」
タマーリンが額に流れる汗を拭いながら一息つく。
「凄いわ」
キティーは驚嘆の声を上げる。
吹き飛ぶマオの身体を空中に巻き上げ、マオがバランスを崩さないように風の魔法を使って速度を落としたのだ。
それがどれだけ正確で繊細なコントロールが必要か、魔法を使うモノなら判る。
それをタマーリンは当たり前のようにやってのけたのだ。
「タマーリン、ご苦労様」
モモエルが横からねぎらいの言葉をかけた。
「わたくしのミケラ様がおケガでもしたら大変ですから」
と言いつつ微笑むタマーリン。
案外、この状況を楽しんでいるようだった。
今回は名前の話
ミケラの元となったのはミケランジェロ。
最初はミケランだったんですが、可愛くないなとミケラに決定。
タマーリンは説明するまでもなく、アーサー王物語に出てくる魔法使いマーリン。
モモエルは猫の名前にモモが多いということから。
サクラーノは桃→ピンク→桜という連想ゲームで。
長くなるのでこのあたりで一旦おしまい
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