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五話「ミケラの日 26」

「いい考えを思いついたから、聞いて」

 サクラーノがミケラとマオを集めてひそひそ話をする。

「それは面白いのじゃ、予に任せるがよいぞ」

 話を聞いてマオはにかっと笑う。

「サクラーノ、本当に大丈夫?失敗したらお母さんに怒られるよ」

 ミケラはサクラーノの説明を聞いて、心配そうに聞く。

「大丈夫、ちゃんと止まれるから」

 サクラーノが任せろと言わんばかりに胸を叩く。

「心配ばかりしても仕方ないじゃろ、いくぞミケラ掴まれ」

「うん」

 ミケラはマオの身体にしがみつく。

 マオも片手でミケラの身体を抱きしめると、翼を広げて空中に浮いた。

 サクラーノが片手を伸ばすと、マオは空いている方の手でその手をしっかりと掴む。

「あれ?もしかしてやばくないか」

 子供の一人がサクラーノが何をしようとしているのか気がついた。

「あれじゃ、ミケラがサクラーノの重しにならないぞ」

 その叫び声が広場に広がった後、

「ぎゃ~~~っ!」

 と言う子供達の悲鳴が一斉に聞こえた。

「うそ、うそ、うそ、冗談やめてよ」

「ミケラ何考えてんだ、サクラーノを止める役だろ」

「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許し下さい」

 反応はそれぞれであった。

「まずいわね、ここはわたしが止めるしかないわね。黒妙、わたしにもしもの事があったら父さん、母さんには白妙は子供達を守って立派に果てたと伝えてちょうだい」

 白妙は覚悟を決めて表情でサクラーノを見る。

「判った、姉ちゃんの骨はわたしが拾うから」

 黒妙も覚悟を決めた。

 何故、こんな騒ぎになったかというと。

 ミケラを引きずって走った場合、サクラーノはあまりスピードが出せなくなるのだ。

 ミケラが重しになるというのもあるが、ミケラにケガをさせないようにスピードを制限しているからだ。

 それがマオに抱えられて空中にいるとなれば重しとしては軽くなる上、ミケラにケガをさせる心配も減るので無制限になる。

 本気の体当たりをぶちかませるのだ。

 そんなモノを子供が食らったらひとたまりもない、下手をすれば命に関わる。

 なので白妙は身体を張って自分が子供の盾になるつもりなのだ。



「じゃあ行くよ」

 皆が固唾を飲んで見守る中、サクラーノが合図をしてきた。

「1歩」

 小さな1歩を踏み出す。

 ペルオの方に向かって進んだ。

「お、俺の方!」

 ペルオとチームメイトの顔がみるみる青ざめ、白妙がペルオを守るためにペルオの方に走った。

 サクラーノのタレントは猪突猛進、一度進み出したら真っ直ぐにしか進まないからだ。

「2歩」

 2歩目で再び子供達を恐怖のどん底に突き落とした。

 真っ直ぐにしか進めないはずのサクラーノが方向を変えたのだ。

「ぎゃ~~~っ!」

 子供達から再び悲鳴が上がった。

 その後、1歩ごとに方向を変え進路に当たる子供から悲鳴が上がる。

「10歩」

 方向を変えながらサクラーノは10歩歩いた。

 その間に、

「黒妙、半分いける?」

「無理、三分の一が限界」

 運動能力は白妙より黒妙の方が高いのだが、判断能力が低いので咄嗟の判断が苦手なのだった。

「判った、後はなんとかするからあっちをお願い」

 白妙が示した方へ黒妙は走った。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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