五話「ミケラの日 23」
「それではいくのじゃ」
マオが合図を出す。
「よしこいっ」
ペルタが気合いの入った返事をする。
「く~ろ~ねこがか、か、かげにき、きエタ」
ミケラのようにつっかえながら言い、最後は超早口で言い終わると素早く振り向く。
「しまった」
ペルタの横にいた男の子が止まりきれずに動いてしまう。
「動いた」
「動いた」
ミケラとサクラーノが目聡く指を指す。
「これで俺とペルエだけになったか」
もうドローは無い。
後は鬼にタッチして半勝ちを狙うだけだ。
「お兄ちゃん」
不安そうな顔でペルエがペルタを見上げる。
「心配するな、ペルエはお兄ちゃんに付いてくるだけでいいからな」
ニコッと笑う。
「うん」
ペルエもペルタの笑顔を見て安心して笑った。
ペルタはペルエの頭を撫でながら作戦を練る。
「サクラーノは早口すぎて距離を詰められない、ミケラもあの変な言い方では動きにくいな・・・最後は予との対決になるか」
ペルタはマオをどう攻略するか考えたが、
「もういい?」
サクラーノがもうマオと交代して考える余裕は無かった。
「ペルエ、お前は無理に動かなくていいからな。兄ちゃんが手を引いた時だけ動け」
「うん」
ペルエはペルタへのハンデとなっていた。
別の男の子と組んでいたらペルタは動きやすくなるので、もっと楽にマオを攻略できるだろう。
ペルエはまだ小さく、早く動けないので反射神経がものを言う黒猫では組みたがる子供がいない、なのでペルタが引き受けているのだ。
ペルタは乱暴な物言いはするが、弟や妹の面倒はよく見ていた。
ペルタの予想通り、サクラーノの早口の前にあまり動けず、ミケラの変な言い方に警戒してやはりあまり距離を詰める事が出来なかった。
ペルタ一人ならなんとかなっただろうが、ペルエが付いてこれないのは判っているので無理は出来ない。
いよいよマオの登場である。
「なあ提案なんじゃが、そのちびっ子の手を離して予と一騎打ちをせぬか?」
マオの提案に周りがざわめく。
当然だろう、ペルエの手を握っている限りペルタは本領を発揮できない。
マオの方が有利なのだ。
その有利を手放すという事なのだから。
「でも、決まりは決まりだから・・・」
迷いながら決まりを盾にして断ろうとするペルタ。
「予との一騎打ちが怖いか?」
その言葉にカチンとくるペルタ。
「兄貴、予に兄貴の凄いところ見せてやれよ」
ペルオが叫ぶ。
「そうだそうだ、勝負を挑まれて逃げるな。チンチン付いてんだろ」
黒妙も叫ぶ。
「はしたない」
再び白妙に張り倒される黒妙。
「よし、その勝負乗った」
こうしてマオとペルタの1対1の対決が決まったのだ。
(Copyright2022-© 入沙界 南兎)