五話「ミケラの日 13」
「わたし、オニやだ~~っ」
サクラーノがごねる。
「わたしもいやだ~~~っ」
ミケラも一緒にごねる。
「だめ!赤引いたんだから、決まりは決まりだ」
ペルタがビシッと二人に言い放つ。
「ううっ」
黙ってしまう二人。
「サクラーノが悪いんだから」
「ミケラだって喜んだじゃない」
ミケラとサクラーノは文句を言いつつ引き下がっていった。
「鬼が決まったから位置に付けよ」
ペルタのかけ声で子供達が空き地の端まで走った。
空き地の真ん中に柱が立っていて、鬼はそこに顔を伏せて「黒猫が影に消えた」と大きい声で言うのだ。
ミケラ達はその柱の周りに集まる。
「これからどうすれば良いのじゃ?」
ルールをよく知らないマオは聞く。
「じゃ、わたしが最初にやってみせるから見てて」
鬼役はチーム全員の持ち回りなので、一番手はサクラーノ。
「それじゃあ、わたし次」
「予はその後じゃな」
ミケラが二番手、マオが三番手となる。
「お~い、こっちはもいいぞ」
ペルタが声を張り上げて始めるように言ってきた。
「おまちなさい」
声とともに空から影が降ってきた。
「げっ、タマーリン」
降ってきたのがタマーリンと判り、ミケラ達以外の子供達の顔が引きつる。
「な、なにしに来たんだよ」
震える声を精一杯張り上げてペルタが聞いた。
「安心しなさい、今日はあなたたちをいじめに来たわけではないですわよ」
今日はと言いきるタマーリン。
「タマーリン」
ミケラが嬉しそうに駆け寄る。
その後にサクラーノも続く。
マオは中央の柱のところから様子を見るように動かない。
それに気がついたミケラとサクラーノは、
「マオちゃんもおいでよ」
「そうだぞ、こいつはいい奴だぞ」
と二人してマオを呼ぶ。
「いやいや、タマーリンが優しいのはお前達二人だけだから」
周りにいた子供達が一斉に心の中で突っ込む。
「そうですわ、わたくしは優しいのですからあなたたちもおいでなさい」
子供達をタマーリンが手招きをした。
悲鳴を上げて一斉に空き地の隅の方へ逃げる子供達。
「失礼ですわね」
文句を言いつつ意地悪く微笑むタマーリン。
「そうだぞ、お前達。タマーリン様に失礼だぞ」
黒妙が逃げた子供達を叱る。
「タマーリン様は凄い方なんだぞ、まだ小さい頃にうちの里を焼け野原にしたことがあるんだぞ、今ならこの街を焼け野原にできるくらい凄いんだぞ。失礼なことを言っちゃダメだぞ」
思いがけなく、思い出したくない過去の大失敗を大声で言われ、さすがのタマーリンも絶句する。
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