五話「ミケラの日 08」
「本当だ、予だ」
「予だ、予だ」
子供達がマオの周りに集まる。
「予、飛んで」
「また飛んで見せて」
「飛んでよ」
マオは仕事帰りにたまにここに寄っては、子供にせがまれて飛んで見せていたのだ。
「お前、飛べるのか!」
サクラーノが驚いたようにマオを見た。
鬼ごっこの時、家にいてサクラーノはマオが空を飛んでいるところは見ていなかったのだった。
遊ぶために外へ出るのはお昼前がほとんどで、お昼からは遊び疲れてお昼寝をして過ごしているからだ。
鬼ごっこの時に外へ出てきたのも、サビエラにミケラがピンチだと聞いて飛び出してきたからだった。
「フフフフ、見よ」
マオは背中に闇の翼を広げて見せた。
「おおっ、黒くてかっこいい翼だ」
サクラーノはランランとした目でマオの翼を見る。
「カッコイイ・・・カッコいいか・・・・・・おぬしはなかなか見る目があるのではないか、ワッハッハッハッ」
笑いながらサクラーノの肩をバンバン叩くマオ。
「隠そうと思っても、隠しきれぬ予の魅力。やはり見る者が見ればやはり判ってしまうのう、これも予の徳と言うやつか」
すっかり舞い上がるマオ。
「ふっ、この翼の魅力を見抜くとはな・・・仕方ない、特別サービスじゃ」
マオはサクラーノの身体をしっかり掴むと翼を羽ばたかせて空に舞い上がる。
「うひゃぁぁぁ・・・きゃはははは」
最初は驚いた物の、すぐに奇声を上げて喜ぶサクラーノ。
「うぉぉぉぉ」
子供達も下から見上げて歓声を上げた。
「楽しいか?」
「うん楽しい」
「そうか、ではスピードを上げるぞ」
マオは高度とスピードを上げた。
鬼ごっこの後、マオはミケラに何度か闇を回復して貰っていた。
少しだけ、飛べる高度とスピードも上がっているのだ。
「しかし、あのミケラの力、ちびっ子どもがキラキラの力と呼ぶ力はなんなんじゃろ?」
飛びながらマオは首を捻る。
「回復魔法ではないのは確かじゃな、回復魔法なら予の闇の力が回復するわけはないからのう」
闇は生物の生きる力とは反対の力、生物の生きる力に作用する回復魔法とは相容れないのだ。
「それに発動条件もわけがわからん、ミケラがワクワクになって目がキラキラ輝いた時とか」
発動条件を小妖精達に聞いた時、マオは「なんじゃそれ」と思わず言ってしまったくらい驚いたのだった。
とにかく、ミケラの不思議能力は発動条件も変なら、作用する力もよくわからない謎パワーなのだ。
マオが考え込んでいるうちに空き地を一周してしまったの飛び立った場所に降りる。
「次わたし」
「次は俺だ」
「僕、僕だよ」
子供達は大騒ぎだった。
空を飛べるだけでも凄いのに、サクラーノを連れて飛んで見せたことで子供達の興味が爆発したのだ。
ミケラを連れて飛んだのは知っていたが、ミケラが特別だから仕方ないという諦めもあったがこれがサクラーノとなれば話は別だ。
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